今、「学校に行かない子どもたち」が、とても増えています。小・中学校の長期欠席者は41万人(うち不登校が24万5000人・令和3年度)にのぼり、過去最高を更新しています。本連載では、20年にわたり、学校の外から教育支援を続け、コロナ禍以降はメタバースを活用した不登校支援も注目される認定NPO法人「カタリバ」の代表理事、今村久美氏の初著書「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から、不登校を理解し、子どもたちに伴走するためのヒントを、ピックアップしてご紹介していきます。
不登校は子ども自身のせいではない
「原因は分からないと言っても、多くの子どもたちは毎日通えている……。やはり、うちの子に何か原因があるのでは?」。
そう考えてしまう親御さんも、多いかもしれません。
それでも私たちが伝えたいのは「不登校は子ども自身のせいではない」ということ。
不登校になりやすい要因として、発達障がいなどの特性が言われることもありますが、仮にそのような特性を抱えるお子さんだったとしても、「発達障がいだから不登校になる」わけではありません。
学校も家庭も、今、変化の過渡期にある
今、子どもを取り巻く社会環境は、様々な変化にさらされています。学校の教員はどんどん多忙になり、過労で仕事を離れてしまう人も増えています。
採用倍率も低下しており、教師の人数も質も、担保するのが難しい状況になっていると聞きます。“少し気にかかる”子どもたちをサポートする余裕がもうないという現場は、とても多いのです。
では、家庭で子どもたちをサポートできるかというと、家族形態の変化により、それも難しくなってきています。
今、18歳未満の子どもがいる世帯の8割以上が核家族です。定年もおおむね65歳まで延長され、平日でも“おじいちゃんおばあちゃんがのんびりしている”なんて家は減っています。
コロナ禍をきっかけに、オフィスに行かずに働くリモートワークも広がり、子どもとの時間が増えた家庭もありますが、そうした働き方が選べるのはまだ少数です。
共働き家庭も増え、昼間は大人が誰も家にいないということも多くあります。
この過渡期の社会のしわよせが、最後に一番弱い立場の子どもたちのところにたぐり寄せられ、「不登校」という形で表出しているとも言えるのではないでしょうか。
本人の特性と環境的社会的要因の掛け合わせ
地域や年代によっては、「子どもに障がいがあるのは親のせい、学校に行けないのは育て方のせい」などと言ってくる方もいるかもしれません。でも、発達障がいなどの本人の特性は、保護者の育て方とは関係がありません。
「子どもが学校に行けないのは、私の育て方のせい? それとも先生のせい? 誰が悪かったの?」など、犯人捜しをしすぎないようにしてほしいです。
どんな環境でも適応しながら過ごすことができる子もいれば、得意とする環境を選ばないと苦しくなる子もいます。仮に発達障がいの診断がついていたとしても、環境によっては適応できる場合もあります。
たとえば、音に対して過敏な特性を持つ子にとっては、落ち着いた子が多いクラスなら元気に過ごせるけれど、落ち着きがなく声が大きい子が多いクラスだと、その状況自体が苦しくなってしまうという場合もあります。
自由に自己決定を許す環境であれば穏やかに過ごせても、厳格で細かなルールが多いと適応できない子もいますし、感じた疑問を先生に指摘しすぎてしまう子もいます。
そういった本人の特性に、発達障がいという診断がつく場合もありますが、個性のひとつとして診断がつかない「グレーゾーン」と呼ばれる子も多くいます。
不登校の子どもたちの中には、発達に特性を持つ子どもたちもいますが、「特性がある=不登校になる」というわけでは決してありません。
あくまでも本人の特性と、環境的要因、社会的要因のかけ合わせの結果であることを、知っておいていただけたらと思います。
*本記事は、「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から抜粋・編集したものです。