創業9年目で売上300億円と、急成長を遂げている家電メーカー、アンカー・ジャパン。そのトップに立つのは、27歳入社→33歳アンカーグループ最年少役員→34歳でアンカー・ジャパンCEOに就任と、自身も猛スピードで変化し続けてきた、猿渡歩(えんど・あゆむ)氏だ。「大企業に入れば一生安泰」という常識が崩れた現代、個人の市場価値を高めるためには「1位にチャレンジする思考法」が必要だと猿渡氏は語る。そんな彼が牽引してきたアンカー・ジャパンの急成長の秘密が詰まった白熱の処女作『1位思考──後発でも圧倒的速さで成長できるシンプルな習慣』が大きな話題となっている。そこで本書の発売を記念して、ビジネスパーソン「あるある」全20の悩みを猿渡氏にぶつける特別企画がスタートした。第18回目は、「お客様目線で考えるためのコツ」について聞いた。(構成・川代紗生)
企業PRよりカスタマーサポートの影響は圧倒的
──後発にもかかわらず、成長を続けているアンカー・ジャパン。競合との差別化になっているポイントは何でしょうか?
猿渡歩(以下、猿渡):カスタマーサポートをすべて内製化するなど、お客様の声を聞くことに多くのリソースを割いていることは、大きな強みだと思っています。
アンカー・ジャパンには、「Empowering Smarter Lives(ハードウェアの力で人々の生活を豊かにする)」というコーポレートミッションがあります。
そのためにもっとも大切なのは、「お客様の声を聞く」こと。
お客様に求められていない製品をつくっても意味がないと思うので、忌憚ない意見を聞くため、今後もメール、チャット、LINE、電話とフルで対応していきたいと考えています。
「カスタマーサポートは、次の売上をつくるフロントライン」と捉え、いただいたお声や商品レビューを分析し、製品の改善戦略に反映しています。
──工数削減のためにカスタマーサポートを代行会社に委託する企業も多いですが、自社でフル対応なのですね。
猿渡:なかには、カスタマーサポートの電話を廃止したり、連絡先自体をあえてわかりにくい場所に掲載したりする企業もありますが、それらの行為は自社都合を優先させすぎです。
カスタマーサポートはお客様と最も距離が近い場所です。
そこでの印象がそのままブランドイメージになるといっても過言ではありません。
それなのに投資をしないどころか、「収益にならず、コストだけが蓄積する部門」として扱う企業はいまだ少なくありません。
どんなに素敵な企業PRより、「カスタマーサポートで、迅速に、丁寧に対応してもらえた」という実体験のほうが、ブランドへの影響ははるかに大きいと私は考えています。
プロダクトは永遠のベータ版
──たしかに、素晴らしい対応をしてもらえたときは、誰かに言いたくなりますよね。それが口コミにつながることは多いと思います。
猿渡:「お客様の意見を聞く」ことに力を入れているからこそ、スピーディに製品改善ができます。これも、カスタマーサポートを内製化する大きな理由の一つです。
『1位思考』でも詳しく解説しましたが、アンカー・ジャパンが常々大切にしているのは、「プロダクトは永遠のベータ版」という意識です。
ウォルト・ディズニーが「ディズニーランドはいつまでも未完成である」「現状維持では、後退するばかりである」と語ったように、現状維持を求めていると、刻々と変化する世の中に、結果として取り残されてしまいます。
完璧な製品というものは存在しません。時代や環境の変化に応じて、常に改良し続ける必要があります。
そのためにも、「お客様の声を聞き、一緒によりよい製品をつくっていく」という意識は、常に持ち続けるようにしています。