変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。同書から抜粋している本連載の書下ろし特別編をお届けする。
私たちの仕事はコミュニケーションで成り立っている
私たちの仕事は他人とのコミュニケーションで成り立っています。
外部の人たちと話す機会の多い営業職でなくとも、社内調整から外部取引先への依頼まで、他人とのコミュニケーションがないと成立しない仕事ばかりです。
また、現代はデジタル技術の発達によって、会話によるコミュニケーションだけでなく、文章で表現する機会も圧倒的に増えています。そして、コミュニケーションが苦手なことで、多くの人を混乱させてしまうこともあります。
例えば、学校からの案内文が不明瞭だったため、保護者が混乱したり、忘れ物が多発したりしたことはないでしょうか。また、自治体からの通達が分かりづらく、ワクチンを接種したり、給付金を受け取ったりするのに苦労した経験などはないでしょうか。
話が分かりにくい人は「具体化」する力が欠けている
では、話が分かりにくい人の特徴とは何でしょうか?多くの場合、「具体化」する力が欠けていることが挙げられます。
具体化する力が欠けていると、説明が冗長になってしまったり、逆に抽象的な表現ばかりになってしまったりして、結果的に相手とのコミュニケーションが上手く成立しません。
同僚や取引先からの長文メールを頑張って読みこんだのに、何を言いたいのか全く分からなかった経験はありませんか?日々何十通、何百通ものメールやSNSのメッセージを受け取っているビジネスパーソンからすれば、たまったものではありません。
かと言って短文であればよいという訳ではなく、短いメールでも具体性に欠けていては、受け手によって解釈が変わってしまいます。そうしたメッセージを相手に伝えたところで、期待する反応を得ることは難しいでしょう。
「具体化」する力をすぐに高めるための3つのポイント
ここでは、具体化をする力を高めるためのポイントを三つ紹介します。
一つ目は、メッセージの受け手に期待するアクションを明確にすることです。
例えば、オフィスのプリンターが故障した際に、「修理の手配をしてほしい」のか、それとも「すでに修理は手配したので、修理が終わるまで使わないでほしい」のかでは、受け手のアクションが異なります。
二つ目は、メッセージの受け手が理解できるような具体性を設けることです。
前述のプリンターの例では、「オフィスに5台あるプリンターのうち、どのプリンターのことを指しているのか」や「修理には2日間要するので、3日目から使用できる」などの具体性は、受け手の理解に役立ちます。
最後は、メッセージの受け手に不要な情報は含めないことです。具体化と言っても、読み手にとって邪魔になる表現や不要な情報は、冗長さやあいまいな解釈につながってしまいます。
「明日までプリンターを使わないでください」というメッセージを伝えたいのに、「朝オフィスに来てクライアント向けの資料を印刷しようとしたら、プリンターが故障していて朝から不快な気分になった」や「プリンター会社の電話対応に問題があったので、クレームを入れておいた」などの情報は、読み手にとっては余分な情報です。
『アジャイル仕事術』では、具体化する力を高める方法以外にも、働き方をバージョンアップするための技術をたくさん紹介しています。
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。