指導者ライセンスが取りやすくなった
制度改革の中身とは?

 例えばC級の取得に関しては、J1に7年以上在籍した選手か、もしくは日本代表の国際Aマッチで20試合以上の出場歴がある選手に対しては、短縮版の特別コース受講を可能とした。通常は1年かかる過程を、憲剛氏が引退後すぐにクリアできた理由がここにある。

 さらにB級修了時でも国際Aマッチ20試合以上の出場歴があり、さらにカリキュラムの成績優秀者に対しては1年以上の指導実績を免除。翌年度からA級を受講できる優遇措置が設けられた。出場歴が68試合の憲剛氏、74試合の内田氏に加えて、38試合の槙野氏ももちろん対象となる。

 JFAではもともと、国際Aマッチ20試合以上の出場歴があるか、もしくはプロリーグの公式戦で300試合以上の出場歴があるA級取得者で、カリキュラムの成績が優秀だった場合にはS級受講前の指導実績を免除する優遇措置も施してきた。一連の制度改革のもとで、代表などで実績のある元選手はS級養成講習会を受講するまでの時間が2年あまり短縮される計算になる。

 C級短縮版やB級取得後の指導実績免除などの優遇措置を21年秋に設けた、JFA技術委員会の反町康治委員長は「もちろん指導実績があるのに越したことはないが、指導にはある程度センスも必要」と持論を展開。その上でロードマップの一部にメスを入れた理由を次のように説明していた。

「今のJリーグを見ても50歳前後の監督が多い状況で、ドイツのブンデスリーガのように30代や40代前半の指導者にJリーグを引っ張っていってもらいたいと常に思ってきた。選手たちのキャリアを含めて、少しでもスピードアップできるように考えた結果です」

 23年度のS級養成講習会を受講する20人の平均年齢は41.15歳。42歳の憲剛氏、20年夏に引退した34歳の内田氏がスピードを速めて受講する構図は、反町委員長が思い描いたものと一致する。

 もっとも、S級養成講習会のカリキュラムも生半可なものではない。5段階に分けられている国内集中講習会などで拘束される日数は、少なくとも62日間に及ぶ。講義内容は指導方法にとどまらず、メディカルや心理学など多岐にわたっている。そこへ終了後のリポート提出が義務づけられたインターンシップが、国内と海外とで計3週間以上にわたって課される。