一方で、「意味がない」「本質的でない」と判断できることは、仮に上司や依頼者から「オーダーと違う」と言われたとしても、すぐにその作業をストップして、本当に必要なことは何かを再考し、提案も可能になります。これも一つの付加価値です。
多角的に「なぜ?」を繰り返すことで真因が見えてくる
繰り返しますが、ビジネスにおいては、「幹」は複雑化しやすく、シンプルに洞察することが難しいものです。その「幹」を正しく捉えるうえで有効な思考法として、山本さんはご自身がかつて在籍していたトヨタの思考法の一つである「なぜを5回繰り返す」にも触れています。さまざまな書籍などで紹介されており聞いたことのある方も多いと思いますが、書籍『独立思考』の中では、この「なぜ5回」ですら、山本さんは独自にアレンジをして活用されています。
その一つが、「一方向ではなく、多角的な切り口からなぜを繰り返す」です。特に、一方向で「なぜ?」を5回繰り返すだけではなく、複数の切り口で「なぜ?」を繰り返し、その接合点を探すアプローチです。そしてその切り口の数が多ければ多いほど真因をミートしやすくなると話されています。
ビジネスシーンの問題解決は、医療と同じで、MRIの検査をしたり、エコーの検査をしたり、血液検査をしたりと、複数の検査結果を突き合わせて、病気の真因を特定するのに似ていると山本さんは説明しています。
山本さんが率いる経営コンサル会社のF6 Design社では、仮説すらもデータドリブンで導き出して仕事を進めるそうです。人間の脳は3次元(3つの切り口)まではイメージできますが、4次元以上の切り口となると、実際には空間は存在しているにもかかわらず、人の脳内ではイメージができなくなってしまいます。そのため「マルチな切り口」といっても、ほとんどの問題解決の際には、切り口は4次元どころかもっと多くの変数が絡んでくるため、多変量解析(データサイエンス)を多用し、仮説すらもそれらを駆使して炙り出すと話します。専門的な統計解析力は必要になりますが、その方が真因特定のミート率だけではなく、特定に要するスピードまでをも圧倒的に短縮できる様になると話します。