暑い日のロサンゼルスの高速道路で、ひどい渋滞にイライラした何人かの人たちが銃を撃ち合い始めるという事件もあった。アメリカでしばしば起こる乱射事件の背景にも、何らかの欲求不満があるものと考えられる。

 過去1年間に失業を経験した人は、就労を続けている人と比べて、家族に対する暴力などの攻撃行動が6倍も多いことが報告されている。こうした暴力にも失業による欲求不満が関係していると考えられる。

実は横暴な上司もまた欲求不満を抱えている

 上司から理不尽な叱責を受けた人が、自分の席に戻るなり、持っていた書類の束を机にバンと叩きつけたり、足下の引き出しを蹴ったりすることがあるが、それも欲求不満によるものと言ってよいだろう。

 だが、このような欲求不満-攻撃仮説に基づけば、理不尽に怒鳴ったりする横暴な上司もまた何らかの欲求不満を抱えているのではないかと推測することができる。

 上役から呼ばれて戻って来るなり、怒鳴るように呼びつけられ、小言を言われたというようなことがあれば、きっと上役から厳しいことを言われ、締めつけられたのかもしれないと想像することもできる。部署としての実績を上げるように上からプレッシャーを受けているのに、思うように実績が上がらないことによる欲求不満があるのかもしれない。なかなかそれ以上に出世できないことが欲求不満を生んでいるのかもしれない。あるいは、家庭に居場所がないなどのプライベート面で欲求不満を抱えているのかもしれない。

 いずれにしても、何らかの面で思うようにいかなかったり、不遇な目に遭ったりしており、その欲求不満によって横暴で嫌な上司になってしまっているとも考えられる。もともとは、それほど嫌な人物ではなかったのかもしれない。

 他人のことはなかなか分からないが、あの横暴な上司にもそれなりに事情があり、もしかしたら欲求不満に苛まれ、ときどき荒れて理不尽な言動に出るのかもしれないと思えば、キレそうになる気持ちを何とか抑えることができるのではないか。