「世界史とは、戦争の歴史です」。そう語るのは、現役東大生集団の東大カルペ・ディエムだ。全国複数の高校で学習指導を行う彼らが、「戦争」を切り口に、世界史の流れをわかりやすく解説した『東大生が教える 戦争超全史』が3月1日に刊行される。世界史、現代情勢を理解するうえで超重要な戦争・反乱・革命・紛争を、「地域別」にたどった、教養にも受験にも効く一冊だ。古代の戦争からウクライナ戦争まで、約140の戦争が掲載された、まさに「全史」と呼ぶにふさわしい教養書である。本書に掲載されている戦争のうち、今回は「番狂わせ」が起きた戦争を3つ紹介します。

【歴史を変えた番狂わせ】意外な結末になった「戦争」ベスト3Photo: Adobe Stock

歴史上の争いには、多くの「番狂わせ」が存在する

 人類は数多の戦争を行ってきました。小国同士の小競り合いから大国同士の争い、あるいは小国が大国に攻め入られることもあれば、その逆もありました。20世紀に入ってからは、文字通り世界中を巻き込んだ「世界大戦」もあり、人類は本当に多くの戦争を経験してきたと言えるでしょう。その中には、「番狂わせ」といえる戦争も多くありました。強いはずの国を、弱いはずの国が倒してしまった戦争です。

 今回は、本書で掲載されている戦争のうち「意外な結末になった戦争ベスト3」を紹介します。

第3位 ペルシア戦争(前500~前449年)

 ペルシア戦争は、アケメネス朝ペルシアギリシアのポリス連合軍との戦いです。当時の大帝国であるアケメネス朝が勝つと思いきや、最終的にはアテネやスパルタといったギリシア勢力が勝利しました。

 この戦争で、ペルシアは主に4度にわたってギリシアに侵攻しました。その中でも第2回遠征におけるマラトンの戦いでは、全身武装した重装歩兵の活躍により、アテネ側が勝利しました。このとき、アテネ側の一人の青年が「この勝利を早く本国に伝えたい!」と一度も休まず走り続け、「我々の勝利です!」と伝えて息たえたという伝説があり、ここからマラソンが始まったと言われています。

 また、映画「300(スリーハンドレッド)」でも有名なテルモピレーの戦いも激戦となりました。この戦いは、20万人とも言われるペルシア軍がたった300人しかいないスパルタ王レオニダス率いる守備隊と激突したことで有名です。レオニダスたちは全滅してしまっものの、険しい山に囲まれた狭い通路だったテルモピレーの地の利も活かしてかなり時間を稼ぎ、続くサラミスの海戦の勝利に大きく貢献したと言われています。

第2位 アドワの戦い(1896年)

 アドワの戦いは、エチオピアに侵攻したイタリア軍が大敗を喫した戦いです。

 この当時、ヨーロッパの国々は世界各地に戦争を仕掛けては勝利し、アジア・アフリカをどんどん植民地化していました。ヨーロッパの「列強」の一つであったイタリアも「アジア・アフリカの奴らなんかに負けるはずがない」と思っていたことでしょう。

 しかし、意気揚々と向かったエチオピアのアドワの地で、イタリアはとんでもないものを目撃します。そこにはなんと、イタリア軍を遥かに上回る兵力が準備されていたのです! さらにその多くは近代的な武器で武装しており、イタリアはまさかの敗北を喫してしまいました。

 実はエチオピアは、この戦いのために各地の有力者たちに呼びかけて勢力を結集させていました。また、背後でフランスがエチオピアを支援したことで、エチオピア軍は近代的な兵器をもってイタリア軍を迎え撃てました。こうしてイタリアは、アフリカの「小国」エチオピアに”まさかの大敗”を喫したのでした。