評価と育成の仕組みづくりを進化させる
――デザイナーの活躍領域が拡大すると、評価や育成にも新しい仕組みが必要になりますね。
経産省がまとめている「高度デザイン人材」の要件も考慮しつつ「デザイナーのスキルの全体像のマッピング」「人材ポートフォリオの可視化」「リスキリングのプログラムづくり」という三つの観点で、新しい教育システムを構築しました。
これから増やしたい人材像を「○○スペシャリスト」と定義し、能力要件を定めるとともに、スキルの可視化により各部門の中で強化すべき領域を明らかにすることができました。特にビジネス関連のスキル強化が課題で、現在までに「経営マインド」「デジタルデータの活用」など13種類のリスキリングのための教育プログラムを独自に企画しました。
デザイナー個人のレベルでも、自己評価、上司評価、他者評価を組み合わせて現在のスキルを可視化し、上司と共に能力向上の方針を決めてスキルアップを進めています。
――デザイナー側は、デザイン以外のスキルを拡張することについて前向きに捉えているのでしょうか。
中には「モノのデザインだけやりたい」と言う人もいますが、「お客さまに喜んでもらえる製品、サービスを提供する」ということを目指すなら、むしろ「全部やりたくてしょうがない」となるのが自然ではないでしょうか。ハードウエアが得意でも、パッケージやカタログにも口を出したいし、ウェブサイトも自分でやりたい、みたいに。
以前はデザインセンターでは、ハードを扱う「プロダクトデザイン室」と、画面デザインを扱う「インタラクションデザイン室」は別でしたが、今は一つに統合しています。デザインのスキルを拡張することは前提で、「やらない」「やりたくない」は評価しないという位置付けです。
――ただ、それが経営やビジネス開発の領域にまで及ぶとなると、個人の適性もありますよね。
それはその通りで、実際の運用では「あなたはここはやらなくていい」というケースも出てきます。ここでも個人との対話が大事で、基本的には「拡げる/深化させることを評価する」スタンスですが、それぞれに合わせた成長目標を設定しますので、場合によっては「拡げなくてもいい」となることもあります。