メールや文書、プレゼン……自分の伝えたいことがうまく伝わらない、と思うことはないだろうか。そんな人にぜひ読んでほしいのが、2023年2月15日発売になった『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』(坂本和加著)だ。著者の坂本氏は「カラダにピース。」「行くぜ、東北。」「WAON」など数々の名コピー、ネーミングを生み出している。本書では、坂本氏が20年以上のキャリアで身につけた、「伝える」ための思考法、技術を余すところなく紹介。今回は本書の発売を記念して特別に一部内容を再編集、抜粋して紹介する。
どれだけ「経験」したことがあるか
コピーライターを目指す学生の方とお話しするときには、いろいろな経験をしておくといいよ、と伝えています。
それは、イメージを牽引するのは「経験」だからです。
「それってこういうことですか」と質問するにも、知っているだけでは足りなくて、わかっていないと出てきません。
知るは、知識、アタマで知っていることです。
わかるは、経験、身をもって自分の血や肉になっていることです。
好きな人に花束を贈る。どうすればいいかは、知識です。どうやったかが、経験です。
経験がたくさんあるというのは、ネットでクリックして花束をクール便で贈る、花屋に足を運んで、店員さんと相談して花束を選ぶ、などの経験を何度もしたことがあるということです。
花束ひとつ贈るにも、プロポーズかお祝いかお見舞いかお葬式かで、目的もちがいます。花の種類、花の色、元気さ、香り、重さ、そのときの自分の気持ち、すべて異なります。
経験は「家の外」にある
考えをふくらませていくには、イメージが必要です。
イメージは経験からくるので、経験不足だと細かいところまでイメージできず、考えがふくらみにくいのです。
イメージがしっかりつかめれば、自分ならどうか、という次の思考段階もスムーズにふくらませられます。
今をめいっぱい楽しんでこそ、経験は血や肉になるものです。
経験は、家の外にある。スマホの外にあることを忘れずに。
こころが何を感じたか、があなただけの経験になります。
(*本稿は『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』より一部抜粋、再編集したものです)
合同会社コトリ社代表
文案家(コピーライター)/クリエイティブディレクター
大学を卒業後、就職氷河期に貿易商社へ入社。幼少期から「書くことを仕事にしたい」という漠然とした思いがあり、1998年にコピーライターに転職。数社の広告制作会社を経て、2003年に一倉広告制作所に就職。2016年に独立し、現在は合同会社コトリ社代表。
主な仕事に、「カラダにピース。」「行くぜ、東北。」「WAON」「イット!」「健康にアイデアを」「こくご、さんすう、りか、せかい。」などがある。受賞歴に毎日広告デザイン賞最高賞ほか多数。著書に『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』(ダイヤモンド社)、『あしたは80パーセント晴れでしょう』(リトルモア)ほか。東京コピーライターズクラブ会員。日本ネーミング協会会員。