2016年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの奇跡』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。
「普通に過ぎていく日々」がもっとも幸せ
2004年に、「小林正観と行くネパール・チベットツアー」を開催したときのことです。チベットの「ラサ」という、標高約3600メートルの場所に行きました。
この地は、私たちが生活する平地よりも格段に酸素が薄いので、ツアーの参加者全員が、「普通に呼吸できることが、いかに幸せなことか」を知ることができました。
ラサのような高地に、飛行機でポンと降り立った場合、「高山病」になることがあります。
ただ、着いてすぐには症状が出ないので、平地と同じような感覚で走り回っていると、5~6時間後に高山病の症状が出ることがあります。
ですから、私たちは、歌舞伎役者のように、ゆっくりした動きで過ごすしかありませんでした。
ラサから平地へ帰ってきたとき、普通に呼吸できること、普通に動き回れることがどれほど幸せか、身をもってわかりました。
世間一般の人から見たら、「だから何? ということ(普通に呼吸できること)」にも楽しみを感じられる感性が磨かれ、さらには、何もなくても、楽しみや幸せを感じられるようになると、「淡々と普通に過ぎていく日々が、もっとも幸せだった」ということに気がつきます。
英語で「現在」は「Present」
つまり、普通の今があること自体がプレゼント
英語で、「過去」を「Past」、「未来」を「Future」、そして、「現在」を「Present」といいます。
何も起きていなくて、淡々と普通に時間が過ぎていくこの瞬間は、じつは、「何も起きていない」のではなくて、宇宙や神様から、最高の「プレゼント(贈り物)」が届いていると考えられるのです。
呼吸ができることも、動き回れることも、贈り物です。
宇宙からのプレゼントは、過去にあるのでもなく、未来にあるのでもなく、今、この瞬間に降ってきている。
数千年前にラテン語を考えた古代人は、この真実に気づいていたようです。そして、「現在」と「贈り物」を同じ言葉で表したのでしょう。
あるとき、40歳くらいの女性から、こう言われました。
「じつは息子から、正観さんにどうしてもお礼を言ってきてくれと頼まれました」
私は、「どうしてですか?」と聞きました。すると、息子さんとの間で、次のようなやりとりがあったそうです。
「息子は、おじいちゃんが苦手でした。厳しいからです。でも正観さんの話を聞いて、おじいちゃんに『ありがとう』と言い続けた。半年経つころには、すごく優しいおじいちゃんになっていた。それで『正観さんにお礼を言ってきて』と頼まれたのです」
「ありがとう」は、人のために言うのではなくて、自分のために言う。誰かが何かをしてくれたら「ありがとう」を言うとか、何かありがたいことがあったら「ありがとう」と言うのは、まだまだ、初心者です。
誰も何もしてくれていないときに、「ありがとう」と言っていると、自分が「こうなったらいいな」と思っていたことが、実現する場合があります。
ただ、「執着している」とダメなようです。「こうならなきゃ嫌だ」と思っている場合は、「現象」は起きないようです。
何か楽しいことが起きたら「ありがとう」ではなく、何事もなく、ただ無事に生かされていることに「ありがとう」を言うことができる。
何も起きていない、この普通の瞬間瞬間が、じつは「神様からの最高のプレゼント」だと思います。
だから、普通の日常生活の中に、喜びや幸せを感じ、感謝をすることができたら、その人は、何も起こらなくても、ずっと幸せに生きていくことができます。
そして、「ありがとう(感謝)」に満ちて生きている人には、神様が応援をしてくれるようなのです。