ベスト経済書・ビジネス書大賞2022#5Photo by Kuninobu Akutsu

経済学者や経営学者、エコノミスト138人が選んだ経済、経営に関わる良書をランキング形式でお届けする特集『ベスト経済書・ビジネス書大賞2022』(全8回)。#5では、3位の『スタートアップの経済学 新しい企業の誕生と成長プロセスを学ぶ』の著者、加藤雅俊・関西学院大学経済学部教授兼アントレプレナーシップ研究センター長に、起業成功の条件について語ってもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第2特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

国際比較すると日本の企業環境の
良くない面が見えてくる

加藤雅俊(かとう・まさとし)加藤雅俊(かとう・まさとし)/一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了。商学博士。一橋大学経済研究所専任講師などを経て現在、関西学院大学経済学部教授、同大学アントレプレナーシップ研究センター長。 Photo by Tomoya Hasegawa

 政府関連の会議に出席し、スタートアップに関する発表をすることが増えた時期があった。そのとき、官僚や著名な研究者の方は、諸外国と比較した日本の起業の実態に驚いていた。

 一方、政府の委員になっている実務家の人たちは成功した起業家の方ばかりだ。それ故、日本全体の起業環境が取り上げられることが少ないだけでなく、客観的な視点に欠けている。

 国際的に数多く研究されている分野にもかかわらず、その成果が知られていないことを実感した。もっと発信すべきだと考え、周囲の研究者に本を書くことを勧めたが、結局私自身が書くしかないという状況になってしまった。

 スタートアップ企業の多くは失敗する。成功するのは一握り。

 起業家の方と対談すると、「日本の起業環境は悪くない」という人もいる。しかし、国際的に比較するとどうしても良くない面が見えてくる。相対的な視点が必要だ。