なぜ低学歴の人ほど受動喫煙にさらされるのか
なぜ低学歴の人ほど受動喫煙にさらされるリスクが高いのか。
「考えられる理由のひとつは労働環境の問題です。例えば、中学・高校卒の方は体力仕事や作業系の仕事に就くことが多く、そういう職場では受動喫煙防止対策がまだ定着していないケースも多いと考えられます。そのような職場で周囲が紙巻きたばこや加熱式たばこを吸っていた場合、学校を出たばかりの新社会人がたばこの煙を理由にその場を離れたり、自分の近くで吸わないようお願いすることは困難ではないでしょうか」(前出・竹内准教授)
このような構造的な問題を示唆するデータもある。厚生労働省が習慣的に喫煙している人の割合を調べたのだが、19年度に喫煙している男性の割合を世帯年収別に見てみると、年収600万円以上が27.3%、年収400万円以上、600万円未満で29.4%、年収200万円未満では34.3%だった。年収が低くなるにつれて喫煙率が高くなっており、ワーキングプア男性の3人に1人はスモーカーなのだ。
低学歴の場合、どうしても低年収の職場で働くケースが多いことは否めない。低年収となると肉体労働や作業系の職場も多く、上司・先輩・同僚は喫煙者が多いという傾向があるので当然、受動喫煙リスクも高まりがちになってしまうというわけだ。
このような話を聞くと、愛煙家の皆さんは不快になるだろう。
「さっきから黙って聞いてりゃ、たばこを吸うと貧乏になるみたいな言い方じゃないか!オレの知っているヘビースモーカーは年収3000万だぞ」みたいに反論をしたくなる人もいるだろう。ただ、金持ちが他人に迷惑をかけず1日に1カートン吸おうが、そんな個別の話はどうでもいい。
筆者が懸念しているのは、貧しい人がたばこをスパスパ吸うことや、たばこを吸わない貧しい人が受動喫煙にさらされる傾向があるという事実によって、日本の格差がさらに広がってしまうことだ。