今回、エルフは17年ぶり、フォワードは16年ぶりのフルモデルチェンジとなる。いすゞの新企業メッセージである「選べる自由、それが『運ぶ』の未来」のコンセプトの下、開発を進めた。
新型エルフは、「デザイン・ホスピタリティ・エコノミー・セーフティ・コネクテッド・ラインナップ」の六つのポイントを中心に進化したほか、いすゞとして初の量産型のエルフEVを市場投入した。また、新型フォワードは、中型トラック分野において、高度化・複雑化する物流業界の課題に対応するため、内外装の全面刷新に加え、各種快適装備・安全支援機能の大幅拡充を行い、23年夏頃の発売開始を予定している。
注目を集めたのがエルフEVだ。
いすゞの片山社長は「エルフEVは、3年間のモニター実走を経て今回の発売に至った」と、力の入れようを明かす。また、今回のBEVトラックの市場導入に合わせ、カーボンニュートラル実現に向けたトータルソリューションプログラムである「EVision」サービスも開始した。
一方で、「社会インフラであるトラックの脱炭素化には、世界各地のエネルギー事情や社会インフラ、資源問題などの課題があり(BEVなどに)収れんするには時間がかかる。BEVの性能・コストも含めて、FCEVやCNG(天然ガス自動車)、ディーゼルにも対応していく必要がある」と、多様なパワートレインの選択肢を用意することの重要性を示した。
いすゞの片山社長は2015年6月に就任し、まもなく8年が経過するが、この間、積極的なアライアンス(提携)路線を進めてきた。まずは、20年にスウェーデンのボルボグループと戦略提携を締結、さらに19年には米エンジン大手のカミンズと包括的パートナーシップを締結した。また、20年にホンダと燃料電池を用いたFCVの大型商用車の共同研究で提携。21年には、一度資本提携を解消(06年~18年)していたトヨタ自動車と、資本・業務提携を復活した。
ボルボとの提携に基づき、いすゞはUDトラックスを傘下に収め(21年)完全子会社化した。トヨタとの資本提携後には、トヨタが主導して設立したCASE対応のための商用車連合CJPTに加わっている。
このように、片山いすゞ体制は多様なアライアンスパートナーの活用という、したたかな経営戦略を進めてきたと言える。かつては「自動車御三家」に数えられた名門いすゞだが、長期にわたり資本提携をしてきた米GMが経営破綻したことで、同社との提携を解消してからここ数年、商用車メーカーとして生き残るために積極施策を打ち出してきたのが特徴的だ。