その中で、いすゞにとって“追い風”となったのが、ライバルでありながら企業としての設立が同根で、バス事業で連携(ジェイ・バス)している日野自動車が、排ガス・燃費不正で国内出荷停止という事態に陥ったことだ。
いすゞは昨年、国内普通トラック市場で首位に立った。また、業績面でも好調であり、22年4~12月期に売上高と全ての利益項目で過去最高を更新、売上高・営業利益ともに前年同期を3割以上上回った。特にタイのピックアップトラックの販売は4割増を示している。一方の日野が今通期550億円の赤字見通しで4~12月期で特別損失284億円を計上する厳しい状況なのと対照的だ。
片山社長は日野に触れて「日野さんは大変だろうが、いすゞとしてはこの大変革期に生き残りを懸けて、いすゞグループとして新企業理念の下でしっかりやっていく」と語った。
トヨタのトップ交代発表に続き、スバルも中村知美社長から6月に大崎篤次期社長への交代が発表されるなど、自動車業界でトップ交代が相次ぐ。いすゞとしても、多様なアライアンスで強固な“いすゞグループ”を形成しつつある中で、8年が経過する片山いすゞ体制は総仕上げの段階に差し掛かったといえよう。
※以下、2段落追記
いすゞは、4月1日付で片山正則社長から南真介取締役専務執行役員に社長交代する。南次期社長は、財務・経営企画担当として片山社長の信任が厚く後継の本命だった。4月からいすゞは、片山会長CEOと南社長COOのトップコンビで激動期の中での生き残りを目指すことになる。
8年間の片山いすゞ体制では積極的かつ多様なアライアンス戦略を進め、7日の「いすゞワールドプレミア2023」は、まさに片山体制の総仕上げとなる大イベントだったのだ。筆者は1月5日に開催された自動車5団体賀詞交歓会で自工会筆頭副会長を務める片山社長に「そろそろ後継を選ぶ頃ですね」と聞くと、「誰がいいですかね」と冗談まじりながら胸の内も見せていた。片山体制としての仕上げで区切りをつけると同時に、南次期社長COOとともに片山会長CEOのいすゞ新経営体制がスタートする。
(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)