「世界史とは、戦争の歴史です」。そう語るのは、現役東大生集団の東大カルペ・ディエムだ。全国複数の高校で学習指導を行う彼らが、「戦争」を切り口に、世界史の流れをわかりやすく解説した『東大生が教える 戦争超全史』が3月1日に刊行された。世界史、現代情勢を理解するうえで超重要な戦争・反乱・革命・紛争を、「地域別」にたどった、教養にも受験にも効く一冊だ。古代の戦争からウクライナ戦争まで、約140の戦争が掲載された、まさに「全史」と呼ぶにふさわしい教養書である。元外務省主任分析官である佐藤優氏も絶賛の声を寄せる本書の内容の一部を、特別に公開する。今回は、ロシアで社会主義政権が誕生した「ロシア革命」について紹介。
ロシアの王政が終了した「二月革命」
1905年1月、真冬のロシアで事件が起こりました。労働条件の改善や憲法改正などを訴える民衆のデモ隊に対して警備隊が発砲し、多くの犠牲者を出したのです(血の日曜日事件)。この事件によって、人々はロシア王政にへの信頼を失い、以後ストライキや農民反乱が全国で起こるようになりました。
さらに追い打ちをかけたのが、日露戦争におけるバルチック艦隊の敗北でした。バルト海から出発してはるばる北極海を回っていった自慢の艦隊が、たかが小国と侮っていた日本にほぼ全滅させられてしまい、ロシアの権威はすっかり落ちてしまいました。
また、日露戦争に加えて、第一次世界大戦の長期化も人々の生活を困窮させました。ついに限界を迎えた労働者たちが中心となり、ロシアでは二月革命(西暦では「三月」)が起こります。これにより、皇帝による政治は終了し、代わりに臨時政府が樹立されました。
「十月革命」により、ロシアで社会主義政党が力を握る
しかし、自由主義者や富裕層に支持された臨時政府は戦争の継続を主張しました。一方、農民や労働者の多くは依然として不満を抱え、戦争を早くやめてほしいと考えていました。彼らが支持したのは、社会革命党や社会主義政党でした。
ここで登場したのが、社会主義政党ボリシェヴィキのリーダーであり、革命家のレーニンです。戦争の即時終結を主張したレーニンは、軍を率いて臨時政府を打倒しました。これを十月革命(西暦では「十一月」)と呼びます。こうしてレーニンは権力を完全に掌握しました。
のちに15か国が加盟する社会主義連邦「ソ連」が誕生
臨時政府が倒されたことで、世界初の社会主義政権である「ソヴィエト政権」が誕生しました。
これを受け、社会主義革命が自国へ波及することを恐れた資本主義国がソヴィエト政権を攻撃しました(対ソ干渉戦争)。レーニンはこれに対抗し、社会主義革命を支持する各国の共産党勢力とコミンテルンという国際組織をつくりました。そして、1922年には、新たに社会主義国家となったザカフカース、ウクライナ、ベラルーシを統合して「ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)」を樹立します。
その後もソ連は加盟国を増やし、1940年には15か国もの国がソ連の一員となりました。その後、超大国として成長したソ連は、世界で非常に大きな存在感を発揮することになります。第二次世界大戦後には、冷戦における社会主義陣営のリーダーとして、国際社会に大きな影響を与えました。
(本原稿は、『東大生が教える 戦争超全史』の内容を抜粋・編集したものです)
東大カルペ・ディエム
現役の東大生集団。貧困家庭で週3日アルバイトをしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、全国複数の学校でワークショップや講演会を実施している。年間1000人以上の生徒に学習指導を行う。著書に『東大生が教える戦争超全史』(ダイヤモンド社)などがある。