職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。

「また今度ランチ行こうね」。小さな約束を守る人、守らない人の決定的な差とは?Photo: Adobe Stock

「簡単な約束」を後回しにしない

 あなたは、あまりにも気軽に「小さな約束」をしていないでしょうか。

「いい本があるから、今度持ってくるね」
「また今度、機会があったら誘うね」
「落ち着いたら、〇〇さんも誘ってご飯しようよ」

「今度」というのは、使い勝手のいい言葉です。
 つい口グセみたいに何度も使っている人が多いように感じます。

 では、どのくらいちゃんと「今度」を実行しているでしょうか
 仕事の納期やアポの時間など、大きな約束の場合なら私たちは絶対に守ります。

 ところが、緊急性のない業務や雑談中に交わした小さな約束ごとは、優先順位の後ろに追いやってしまいます

 たとえば、提出物です。取りまとめる担当者は、提出状況を毎日確認しています。期日を守らない人には催促の連絡という業務も生まれます。
 簡単な提出物ならば、後回しにせず当日中に出してしまいましょう。

 期日を守ることは、担当者のストレス軽減と時間節約への気づかいです。

「小さな裏切り」が
誰かを傷つけているかもしれない

 先ほども述べたように、「今度ランチでも行こうね」という言葉は、「お疲れさま」くらいの感覚で、私たちの口グセになっています。
 ただ、言ったほうは忘れても、言われたほうは案外、忘れていません

 特に若い人は、本気で信じていたりします。
 実際に、その言葉を受け止めて、「いつ誘ってくれるのかと楽しみに待っていたけど、誘われなかったから、嫌われているのかもしれない……」と悩む新入社員もいます
 声をかけたほうの人は、「まあ、たぶん忘れているだろうな」と、都合よく考えてしまいます。
 若手にとっては先輩から誘われたランチは特別なものです。気軽に声をかけたことが、小さな裏切り行為になることもあるのです。人はそんなに簡単には忘れないものです。

 このように、「小さな約束」は、スマホなどにメモしておいて、タイミングを見て、守るようにしましょう。
「あの人は口だけだ」というイメージが一度ついてしまうと、なかなか払拭できません。
 職場で誰にでもできることは、「小さな約束だからこそ守り抜く」という姿勢です。

 まずは、これまで「今度ランチしようね」と声をかけた人たちを1人ずつ思い出してみて、もう一度、本当に誘ってみましょう
 きっと、「覚えていてくれたんだ!」という安心感を生み出せると思います。

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。