Googleの牙城が崩れる日

 では、ChatGPTがどの門番の座を最も脅かしているかというと、検索だろう。テクノロジーに明るいユーザーがChatGPTの利便性を認めた今となっては、今後ユーザーが何か疑問を覚えたとき、最初に尋ねる相手が検索ではなく対話AIになる可能性は否定できなくなっている。

 つまり、Googleの牙城を脅かされている。Googleの検索結果は、年々増加する広告で埋め尽くされており、ユーザーの認知機能に不要な負荷をかけていることは明白である。また、Googleは検索最適化(SEO)という、友人であり敵でもある存在に悩まされている。あなたが知りたいことを検索したとき、長文のブログに行き当たり、必要な情報はブログをスクロールし尽くした後に見つかった(あるいは見つからなかった)という経験をしたことがあるだろう。Googleがリンクを付けるWebは年々肥大化し、品質が悪化している。すると、ユーザーとウェブサイトをつなぐ検索の利便性は落ちていく。検索とそれに付随するWebは、人類の脳の力という希少な資源を無駄にしている側面を拡大させているのかもしれない。

 一方、ChatGPTの画面には質問と回答以外の不要な情報がない(回答がまるっきり間違っている可能性もあるが)。商業インターネットが普及して以来、ずっと人類の時間を無駄にしてきた余分な低品質情報を排除し、人類の脳をより生産的なことに利用できる可能性を示しているのだ。

 検索はGoogleの「金のなる木」である。Googleの親会社であるAlphabetの売上収益は、2011年以来、年平均20%以上の成長を示してきた。この間、営業費用控除後のキャッシュフローは3000億ドルを超え、その大部分は検索事業から得られている。検索の「門番」の地位が揺らぐということは、不落城に見えたGoogleの陣営が壊れることを意味する。