「もう一つの問題」は
不要な税負担の増加

 もう一つの問題は、不要なコスト増(税負担増)だろう。

 無償化(税負担)とは、サービス利用者が対価を払わず、税金で支払ってしまうことになる。冒頭に述べた給食費無償化(税負担)をはじめとする教育費無償化(税負担)は、サービス提供者にとって値上げがしやすい環境になる。

「アメリカでは、1980年代連邦政府の各種奨学金が充実すると、私立大学、公立大学とも授業料を値上げしてきた。奨学金が充実するので、低所得者に対する機会提供がなされたとして、私立公立大学は機会均等への関与が弱くなり、授業料を値上げに踏み切るのである」(「高等教育無償化政策の意義と課題」広島大学・高等教育研究開発センター特任教授・丸山文裕氏)という。

 参院選の前にも起きたことだが、政治家は有権者に対して、「あれもやります、これもやります」などと調子のいいことばかりを公約に掲げる。そして選挙が終われば、その「あれもやります、これもやります」の公約実現には、増税、借金、予算の付け替えをする必要があることを真顔で言い出すのである。

「責任与党として財源もきっちり考えています」などと言い出す政党もいるが、大事なことは「あの予算を削ってこれに付け替えます」「好況による税収増で負担できます」「国債を大量に発行すればいいのです」「増税すれば大丈夫です」ではなく、「支出に見合った政策効果がきちんとあるのか」というその一点なのである。

 政策効果がないのに予算を使うことは、どんなに美しい目的が掲げられたとて、無意味であり、ムダ遣いであることを国民は肝に銘じるべきだろう。

 医療費が無償化(税負担)になって、本当に国民の健康度は増すのですか。教育費が無償化(税負担)になって、本当に学生の学力は増すのですか。

 統一地方選挙で有権者が行動すべきは「政治家のやってます感」の承認でなく、全否定だろう。政策効果にまで言及できず、増税するしか能がない政治家にNOをたたきつけよう。