突然だが、あなたの職場の「仕事ができる人」を何人か思い浮かべてみてほしい。おそらくその人たちには、「数字に強い」という共通点があるのではないだろうか?
全国3000社が導入し、大きな反響を呼んでいるマネジメント法「識学(しきがく)」の代表・安藤広大氏の近刊『数値化の鬼』は、まさに「数字に強くなる=仕事ができるようになる」という発想で、「数値化」の思考法を伝授する1冊だ。
本稿では、シリーズ累計70万部を突破している本書より一部を抜粋・編集して、「優秀な人から辞めていく職場」に共通する“問題点”を明かす。(構成/根本隼)
インセンティブ制度の「デメリット」とは?
インセンティブ制度は、非常に要注意な考えです。この制度を丸ごと否定しているのではなく、注意して扱う必要があるという話です。
インセンティブを取り入れると、社内で競争が生まれます。そのこと自体は、活性化につながるので短期的なメリットではあります。
しかし、長期的にデメリットが存在します。インセンティブ制度があると、全員が目先のことだけを考えるようになり、気持ちは期ごとに区切られ、帰属意識が少なくなります。
むやみに導入すると「優秀な人ほど辞めていく」
まず、インセンティブ制度だと、トップの経営者だけで全員の評価を下せるようになります。社長、部長、一般社員という3つの階層があるとすると、真ん中に部長が存在する意味がなくなります。
この現象は、外資系の保険会社などに多く見られます。
営業のプレーヤーが数字をガンガンあげて、トップの経営者がそれに応じた給料を支払います。すると、プレーヤーは経営者のことを見て仕事をするので、上司である部長との関係が機能しません。
こういうプレーヤーは、さらに稼げる環境があれば、すぐに転職をします。組織全体に貢献するほうのインセンティブがまったく無いからです。
これは、芸能事務所を見てみればよいでしょう。芸能事務所は、個人の集まりで、チームプレーがほとんどありません。そうすると、看板タレントが偉くなります。有名タレントが経営陣よりも発言権が高くなります。
「気に入らないことがあればいつでも辞めるからね」という力関係が生まれてしまうのです。こうなってしまうと、他の所属タレントにとってメリットもありません。
ということで、長期的に会社をよりよくしていきたいのなら、インセンティブ制度だけではうまくいかないのです。
(本稿は、『数値化の鬼』より、一部を抜粋・編集したものです)