マスク着用が心地よくなった人たちは、
外す意味がない
実は昨年5月、筆者は本稿と似た趣旨の記事『マスク外す?政府がOKでも「世代間ギャップ」と個人差でもう一波乱か』を書いた。「政府が条件によってはマスクを外してオーケーと言っているけど、急にそんなには外せない?」といった具合の内容である。
その記事で、「みんな周りをうかがう姿勢が強いので、マスク緩和は政府が提唱してもしばらく行われず、緩和の流れがある程度整ったら一気に行われる」といったことを主張した。今回はこの見通しに、ひとつ加筆修正を加えたい。それは「緩和が行われ、完全に完了したとしてもマスク着用勢は残存する可能性あり」である。
政府が脱マスクを提唱する背景には、「コロナ禍以前の人間的な生活を取り戻そう」という雰囲気が世間にあった。コロナ禍は多くのネガティブ要素をもたらし生活を蹂躙した「悪」であり、コロナ禍以前の生活への回帰こそが人間としての尊厳を取り戻す唯一の道である――というような思いが、政府に限らず、多くの人にあった。あるいは、個々人はそこまで考えていなくても、企業やインフルエンサーなどによって不特定多数に向けて打ち出されるメッセージは『つらい今を乗り切ろう』が定型句で、「コロナ禍を歓迎すべからざるものとして取り扱う」のが共通認識となっていた。
だがコロナ禍にあって創意工夫する中で、ポジティブなものもいくつも生まれた。「リモートワークという選択肢の誕生」などがそれである。
「ポジティブな誕生物」の中に、「マスク着用の心地よさに開眼」があるのではないか。