自分の中に「ジャンプのスイッチ」を埋め込む
Photo by ASAMI MAKURA
藤本 SFという少々とっぴな未来像を社外に発表することについては問題ありませんでしたか。
羽賀 LIXILの公式見解としてではなく、あくまで「未来の一つの可能性」を探る試みである、と切り分けていましたから、特に問題はなかったです。というか経営層も面白がっていましたね。
藤本 社内外からの反応はいかがでしたか。
浅野 熱い声が多くて驚きました。応募作品にも「すてきなチャンスをありがとう!」「楽しかった!」といったメッセージがたくさん添えられていて、社内からも「自分もやりたい」とか、「応募作品の審査に加わりたい」という声が集まりました。社外からは、特にデザイナーのようなクリエイティブ系の人たちから「面白いことをやっていますね」「知人にも知らせます」といった反応をもらいました。
羽賀 工務店さんや職人さんからも「あれ、面白いですね」と言われましたよ。「普段と違うことをやってみたい、考えてみたい」と思っている人は、意外と身近にいるんだなあと思いました。
青山 次の機会があれば、参加者が自分で執筆してみるのもいいですよね。
羽賀 いいですね。それに、メンバーにもっと異質な人を巻き込めば、アウトプットがさらに面白くなると思います。普段の業務では、社外の人たちと遠い未来について語り合う機会なんてないし、ユーザー調査にも絶対出てきませんから。
浅野 私自身、このプロジェクトを通じて発想の範囲が確実に広がったし、他業界や異分野の情報からも、得られる気付きの量が増えました。ぜひ、たくさんの人に体験してほしいと素直に思います。
藤本 一度、発想が枠外までジャンプすることで、思考のフェアゾーンが広がる感じですね。
羽賀 発想をジャンプさせないといけない局面は、これからますます増えると思います。でも、「ジャンプしたい」と考えてできるものではありません。実際にやるから気付くし、体験そのものが肥やしになって、意識の奥底で何かが育っていく……。それが重なっていくと、ジャンプすることそのものにちゅうちょがなくなっていくように思います。スイッチが自分の内部に植え付けられて、別方向からの刺激にも反応しやすくなっていくようなイメージです。
藤本 公募で集まったアイデアが、今後、具現化されていくプロセスも楽しみにしています。本日はありがとうございました。