「話し手ファースト」の説明会は
“時間のムダ”
越川慎司 著
システム部門主催による「ITツール導入説明会」。説明会を終えて会議室を出てきた社員の「あるあるセリフ」があります。
「なんか、システム部門の説明、専門用語がやたらと多くて、やけに難しかったけど、意味わかった?」
「ううん、ぜんぜん。途中から寝てた。まあ、いいよ、使わなければ関係ないから」
これでは、せっかく時間を取って説明会を開いた意味がありません。
なぜこんなことになってしまうのかというと、ITツール導入にかかわった部門の「せっかくの便利な機能を知ってもらいたい。使ってもらいたい」という思いが強すぎて、つい、「詳しすぎる説明」をしてしまうからです。自分たちの思いだけで説明をしてしまう「話し手ファースト」と言われても仕方ありません。
その結果、ただでさえITにアレルギーがあるベテラン社員が、ついていけないまま説明会が終わるという残念な結果になってしまうのです。こんな説明会に時間を使うのは、聞く立場はもちろん、話す人にとっても時間のムダです。どうすれば解決できるのでしょうか。
一般社員が説明会で知りたいことは1つ。「いったい、どうやったら使えるようになるの?」、これだけですよね。
しかし、ITの導入に携わったり、場合によってはシステムの開発にタッチしたりしていた部署のメンバーは、思い入れが強すぎて、聞き手の一般社員が何を求めているのか、見えなくなっています。そこで、「めったに使わない機能」まで説明しても拒絶反応が起きてしまいます。
「水を飲みたがっている相手にコーヒーを出しても飲んでくれない」ということです。
あなたがITの浸透を促す立場であれば、事前にシステム部門へ現場の要望を伝えておくとよいでしょう。
「現場が聞きたいことは2つ、顧客情報の検索方法と、売り上げデータの見方です」
可能なら、システム部門の人に、こんな説明をしてほしいとオーダーしてはどうでしょうか。
使いはじめの最低限のやり方だけ聞けばいいのです。付属の機能や、トラブルの対処法なんて、説明会で聞いても忘れてしまいます。マニュアルの場所を聞いておき「わからなくなったら、ここを見ればいい」で十分なのです。