子どもにとって、一番つらいのは「わからない授業」

──ご自身も中学受験をされたそうですが、どんな印象がありましたか?

小杉:1校だけ受けたのですが、とにかく緊張していましたね。私は、小学1年生から学習塾に通っていたのですが、塾があまり好きではありませんでした。塾にせっかく6年も通ったんだから、絶対受かりたい!と思って、がむしゃらに試験に向かって行ったのを覚えています。

塾があまり好きではなかった理由は、そこでの授業内容を理解できないことが多かったからです。集団授業だったので、わからないことがあるたびに質問するわけにもいきません。自分自身に非もあったと思いますが、つらい思いをしながら通っていました。だから、合格した時はうれしかったですね。

──今は、指導する側に回られていますが、ご自身がお子さんたちを指導する際に気をつけていることはありますか?

小杉:そうですね、今の話と共通するのですが、中学受験生に限らず、子どもにとって一番つらいのは「わからない授業」だと思っています。ですから、わかりやすい授業を徹底して追求し続けてきました。例えば、教えても生徒が理解できない時に「どうして理解できないの?」とか「前にも教えたよね」と発言するのは避けるべきだと思っています。教える側としては、「生徒が理解できないのは、自分の教え方が良くないからだ」と捉えて、「どうすればわかってもらえるか」とさまざまなアプローチで教えるのが大事だと考えています。

──本書は非常に細かいステップを踏んで進むよう構成されていますが、今のお話を伺うと「『わからないからつらい』とならないように」という小杉先生の思いが反映されているからかなと思いました。やはり、「確実にクリアできるように」という配慮があってのことでしょうか?

小杉:そうです。本書では、スモールステップ形式で、ステップ1からステップ8で構成していますが、例えば「簡単だから」とステップ2を飛ばして、ステップ1からいきなりステップ3の内容に飛ぶと、そこでわからなくなるケースがあります。「わからない」というのは、子どもにとってつらいこと。「この本は嫌!」となってしまった子に無理矢理やらせると、お子さんはもっと勉強嫌いになってしまう可能性もあります。「あれ、この本、なんかスイスイ解ける!」という状態が子どもにとっては快適な状態といえるので、過度なくらいのスモールステップを踏むことを意識しました。結果的にそうして良かったと思っています。

──かなりスモールステップになっている分、逆に「ここはわかるから飛ばそう」となるお子さんもいると思うのですが、飛ばしても問題はないですか?

小杉:1ステップにつき30~50問ほど練習問題を設定しているので、例えば「10問解いてみて合っていたから、1ページ分は飛ばしてしまう」というのは、ときにうまくいくこともあります。でも、飛ばした次のページで間違いが目立つようなら、やはり順序よく解いた方がいいと思うので、その場合は前のページに戻ってほしいですね。簡単と思っていても、計算方法がきちんと定着するかどうかが肝ですので、解けると思っていてもできれば1ページずつ丁寧に進めていただくのがおすすめです。

良い暗算法が、世間に広まりにくいのは、いざ使う場面が来たら「あれ、どうするんだっけ?」と、その計算方法を忘れてしまうことが多いからなんです。暗算のやり方を知ったときは「すごい!使ってみたい!」と思うものです。一方で、「あの暗算法を使いたい!」と思ったときに、そのやり方自体を忘れてしまうというのが暗算法の弱点(周知されていかない原因)でもあります。本書では、暗算法のその弱点を、反復練習とスモールステップによって極限まで減らしました。だから、きちんと理解・定着ができて、「自分の武器になった」という感想がいただけているのだと思います。

自学で身につけるのも、親子で一緒に学ぶのもおすすめ!

──主に、中学受験生に向けたお話を伺ってきましたが、中学受験をしない小学生であっても、おみやげ算は身につけておいた方がいいのでしょうか。

小杉:公立中学校に行く場合であっても、四則計算はもちろん、小数や分数の計算など、小学校の算数できっちり基礎を身につけておかないと、中学入学後、数学についていけなくなるおそれがあります。ですから、算数の基礎である「計算力」を小学生のうちにできる限り鍛えておくことが大切です。

計算力を伸ばすための手段の一つが暗算です。九九が暗算の代表格ですが、それと合わせて、このおみやげ算で「11×11から19×19の暗算」を習得することをおすすめします。受験をする・しないに関わらず、おみやげ算ができることによって計算力は強くなりますから、今まで計算に苦手意識を持っていた子も、自信がつく最初の一歩になる可能性があると思っています。

──本書でおみやげ算を勉強していく上で、親御さんが気をつけた方が良いことはありますか?

小杉:本書を使えば、お子さん一人でも解き進められる場合が多いでしょう。親子で一緒に学びたい場合は、親御さんが見守る形で、お子さんの横に座って、時々確認しながら楽しく共に勉強していただくのもいいと思います。親子で一緒におみやげ算を身につけることで、良いコミュニケーションになるでしょう。

一方、巻末に記載している「おみやげ算のたねあかし」、つまりおみやげ算の計算が成立する理由については少しややこしいので、親子で一緒に学ぶことをおすすめしています。長方形の面積図を使いますので、実際に、長方形の紙を用意して学習すると、計算の成立理由をより具体的に理解できると思います。

【大好評連載】
第1回 【大反響の算数ドリル】17×18を5秒で暗算できる!話題の「19×19までの暗算法」とは?
第2回 たった1日で11×11から19×19の暗算ができるようになる!「子どもの算数嫌いを克服する」すごい本の秘密
第3回 中学受験生に怒涛の勢いで広がっている「11×11から19×19の暗算法」とは?
第4回 【異例の大ヒット】小学生向けの「暗算ドリル」が大人に大反響の理由とは?

中学受験生に怒涛の勢いで広がっている「11×11から19×19の暗算法」とは?【著者】小杉拓也(こすぎ・たくや)
東京大学経済学部卒。プロ算数講師。志進ゼミナール塾長。プロ家庭教師、SAPIXグループの個別指導塾の塾講師など20年以上の豊富な指導経験があり、常にキャンセル待ちの出る人気講師として活躍している。現在は、学習塾「志進ゼミナール」を運営し、小学生から高校生に指導を行っている。毎年難関校に合格者を輩出している。算数が苦手な生徒の偏差値を45から65に上げて第一志望校に合格させるなど、着実に学力を伸ばす指導に定評がある。暗算法の開発や研究にも力を入れている。ずっと算数や数学を得意にしていたわけではなく、中学3年生の試験では、学年で下から3番目の成績だった。数学の難しい問題集を解いても成績が上がらなかったので、教科書を使って基礎固めに力を入れたところ、成績が伸び始める。その後、急激に成績が伸び、塾にほとんど通わず、東大と早稲田大の現役合格を達成する。この経験から、「基本に立ち返って、深く学習することの大切さ」を学び、それを日々の生徒の指導に活かしている。著書は『ビジネスで差がつく計算力の鍛え方』『この1冊で一気におさらい! 小中学校9年分の算数・数学がわかる本』(ともにダイヤモンド社)、『改訂版 小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版)、『増補改訂版 小学校6年分の算数が教えられるほどよくわかる』(ベレ出版)など多数。

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