新卒一括採用、年功序列…もう限界の雇用慣行

 中途採用者を増やす企業が増えている背景には、新卒一括採用、年功序列の人事システムによって管理・評価し、定年退職まで一つの企業で働き続けるというわが国の雇用慣行が限界を迎えていることがある。それは、厚生労働省の『令和2年転職者実態調査の概況』からも確認できる。

 人口が増加し、経済成長も高い水準が続く状況下であれば、わが国の雇用慣行は大きな問題にはなりにくかった。経済成長に合わせて事業を拡大するためには、一定の人員を毎年採用し、できるだけ長く働いてもらうことの重要性は高まる。また、わが国では、「和をもって貴しとなす」の価値観が重視されてきた。それが、同僚との協調性を保ち、自社の経営風土にマッチした人材を一括して大量に採用することにつながっていた。

 そして、実績よりも年功にしたがって個々人は評価される。人材育成はゼネラリストの養成が重視され、各事業部門の労働力の過不足は中途採用ではなく人事異動で対応する。結婚、出産、子どもの受験などライフステージに合わせて給与は増え、定年まで勤め上げる。それは、企業の労働力確保と、従業員の人生設計を支えた。

 しかし、1995年以降、わが国の生産年齢人口(15~64歳)は減少している。2008年をピークに総人口も減少し始めた。それに伴い、わが国では徐々に、終身雇用と年功序列の弊害が顕著になった。

 若年層の採用が減少し、組織におけるシニア層の割合が高まった。これは構造的な問題であり、結果的に、多くの企業で技術やノウハウを次世代に継承することが難しくなっている。後継者不在を理由に廃業を余儀なくされる中小の事業者も増えている。加えて、世界経済のデジタル化とともに物流や飲食、宿泊などサービスの分野では、人手不足に拍車がかかっている。