ソニー快進撃の勝因
世界経済の先行き懸念高まる中、ソニーは過去最高の売上高を更新した。家電業界の中でソニーの収益力の向上は顕著だ。23年3月期決算のセグメント別業績を確認すると、ゲーム関連事業の売上高は3兆円を超えた。音楽、映画、半導体など、金融を除いた分野も1兆円を上回った。かつて「ウォークマン」のヒットによって、世界のミュージックライフを一変し高い成長を実現した、あのソニーが段々と戻ってきたようにも思える。
その“勝因”を端的に言うと、ソニーは強みを発揮できる分野にヒト・モノ・カネをダイナミックに再配分したからだ。直近10年間で、資産売却などのリストラで資金を捻出し、得た資金を、世界トップシェアを誇る画像処理半導体(イメージセンサ)の研究開発や製造に再配分した。
24年~26年に半導体分野での設備投資は1兆円を超える見通しだ。半導体の製造技術の向上は、画像、音響などの処理技術ニーズを支え、デジタルカメラ、音響機器などの分野でもソニーの競争力は高まった。
そうした要素技術を、ソニーはソフトウエアの分野と新たに結合した。アニメや映画、音楽、「プレイステーション(PS)5」などのゲーム分野で新しい機器やコンテンツの提供体制を徹底して強化している。22年に完了した米ゲーム大手バンジーの買収は、コンテンツ創出体制の強化に向けた一つの取り組みだ。
ソニーは、画像処理センサであるCMOSイメージセンサーの世界市場で40%超のシェアを握っている。その多くを、長崎県、大分県、熊本県の工場で生産している。ソニーにとってわが国のモノづくりの実力は、競合他社との差別化を徹底する重要な要素といえる。モノづくりの力を引き上げることによって新しいコンテンツを生み出し、収益が得られる分野を広げている。