パナ、シャープ、東芝…停滞気味の家電業界
一方、わが国の家電業界は停滞気味だ。単純に比較はできないが、23年3月期の第3四半期の時点で、ソニー以外の主要家電メーカーは、業績の下振れ警戒感を示していた。
23年3月期のパナソニックホールディングスの連結業績は、売上高が8兆3789億円(前期比9901億円増)、営業利益は2886億円(前期比690億円減)、経常利益は3164億円(前期比440億円減)、純利益は2655億円(前期比102億円増)。ソニーの収益力に比べると見劣りする。
一時、パナソニックは世界の車載用バッテリー市場においてトップのシェアを獲得した。しかし17年、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が、パナソニックを追い抜き世界トップの車載用バッテリーメーカーに成長した。
CATL経営陣の成長志向は高い。成長性の高さに着目し、中国共産党政権が産業補助金政策などを強化したことも大きい。対照的に、パナソニックは自社の優位性が維持できる分野での競争力引き上げ=製造技術の向上が遅れた。
わが国にはセパレーターなどバッテリー部材などで高い技術力を持つ企業は多い。そうした企業との連携強化や海外企業の買収で、パナソニックが世界最大のバッテリーメーカーとしての地位を築くのは可能だったはずだ。しかし今現在、パナソニックは白物家電などの既存分野、人工知能(AI)などを用いた産業用のIoTビジネス体制の強化、さらにはバッテリーと、総花的な事業ポートフォリオのままだ。
シャープも、成長分野での事業運営体制の確立が遅れた。大阪府堺市のディスプレー工場への過剰投資が重荷となり、シャープは自力での事業運営に行き詰まった結果、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収された。それによって、一時は徹底したコストの削減と米アップルへのディスプレー供給増加によって業績は回復した。
しかし、シャープの23年3月期決算は、2608億円の最終赤字となった。テレビ向け液晶パネルの不振などが要因だ。最終赤字に沈んだのは、経営危機に陥った17年3月期以来となった。
その他、東芝は、本邦主要企業および金融機関連合による買収によって経営再建を余儀なくされているのは周知の通りだ。