三菱商事はいかに純利益1兆円を突破したか

 23年3月期の三菱商事の連結純利益は、前年度比25.9%増の1兆1807億円だった。従来の自社予想(1兆1500億円)も上回った。

 純利益の増加によって、同社は1株当たりの配当金を前年度実績の150円から180円に増やした。自社株取得の上限金額も同700億円から3700億円へ拡充された。

 現在、同社の事業ポートフォリオは10分野から構成されている。具体的に、天然ガス、総合素材、石油・化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンビニのローソンなどコンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発だ。

 セグメントごとに決算内容を確認すると、9分野で純利益は増加した。増えなかった1分野は食品産業で、海外事業における固定資産からの減損の発生などが減少要因だ。

 純利益1兆円突破の背景にはいくつかの要因がある。まず、円がドルなど主要な通貨に対して減価した(円安の進行)。22年5月時点、同社予想の年度末ドル円レートは1ドル=120.00円だった。対して実際に着地した為替レートは1ドル=135.50円だった。

 同社は、1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因になるとしている。日米の金融政策の違いなどによって円安が進んだ結果、同社の収益は上振れた。また、原油など世界的な資源価格の上昇も大きい。

 そうした外的要因だけでなく、事業ポートフォリオの見直しと入れ替えの加速も好影響を与えた。具体的には、不動産運用会社や海外での発電事業の一部を売却し、投資資金を回収した。資金が再配分されている分野の一つが、脱炭素関連分野である。

 異常気象や大気汚染などの問題に対応するために、脱炭素は急務と化している。主要先進国では、石炭などの火力発電を減らし、再生エネルギーを用いた発電が強化されている。世界的な「エネルギー・トランスフォーメーション(EX)」に対応しようと、事業分野を拡大した結果、純利益1兆円を突破したのだ。