株式投資をする人たちの間で大きな支持を集める話題の1冊が『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』だ。60問のクイズを答えるだけで、「投資のコツ」をつかめる手軽さが人気で、「今まで読んだ株の本の中でトップクラス」「すごく理解しやすい」と絶賛の声が続々だ。
本稿前半では、『株トレ』の著者であり、ファンドマネジャーとして2000億円超もの資金を運用してきた経歴を持つ楽天証券・窪田真之氏に、「勝てる個人投資家と勝てない個人投資家の違いは何か」教えてもらった。さらに本稿後半では、特別に『株トレ』から一部を抜粋して紹介する。

株で勝てない人に共通する「買い方、売り方の1つの悪いクセ」Photo: Adobe Stock

個人投資家は「成行」の売買が鉄則

ーー指値と成行はどのように使い分ければいいのでしょうか?

窪田真之:100株単位で売買する個人投資家は、特殊な状況を除いて、指値は使わず成行で売買するのが鉄則です。

 ファンドのトレーダーは、短期間で同じ銘柄を何万株、何十万株も売買するので指値を使いますが、個人投資家は、チャンスだと思えばすぐに成行で買い、危ないと思ったら即座に成行で売るべきです。

 ところが、多くの個人投資家が指値を使おうとします。

 例えば、買いたいと思った株が2000円だった時に、1950円で指値注文を入れます。

 これは非合理なトレードです。

 なぜかというと、この買い方が成功するのは、2000円だった株が1950円まで値下がりし、そこから反発して値上がりして終わる場合です。

 下落してから上昇するという2つの動きを同時に予想している、矛盾を抱えたトレードです。

 仮に当たったとしても、ラッキーだっただけで、トレードの技術ではありません。

 ちなみに、個人投資家が指値を使いたがる傾向は、「投資主体別売買動向」を見ると明らかです。

 株が下がっている時に、売っているのは海外投資家で、買っているのが個人投資家です。

 一方、株が上がっている時に、買っているのは海外投資家で、売っているのが個人投資家です。

 あなたが株のトレードで稼ぎたいと思うなら、取引額の大きな海外投資家のトレードと逆の売買をしてはいけません。

 株を買うべき絶好のタイミングは、多くの投資家がその銘柄を買っていて、株価が急騰している局面です。

 逆に株を売るべきタイミングは、多くの投資家がその銘柄を売っていて、株価が暴落している局面です。

 チャンスを逃さないために、トレンドに逆らわず、成行で売買するべきでしょう。

『株トレ』のクイズに挑戦

 J社を100株、1312円で買ったところ、いきなり悪材料が出て、次の日は売り気配スタート。

 午前中やっと値がついた時には20%以上安い1042円。

 ここからどうする? 次の4つの選択肢から1つ選んでください。

(1)1100円で100株、指値売り

(2)1050円で100株、指値売り

(3)100株成行売り

(4)1020円で100株、指値買い

あなたなら、どのように売買する?『株トレ』より抜粋

正解は……

 ここは迷うことなく、(3)成行売りの一手です。

 三十六計逃げるにしかず。どんな買いシグナルも、それを打ち消す「強い下げ」が出れば、「強い売りシグナル」に変わります。それができれば、あなたは上級者です。

 問題は注文の出し方です。確実に売れる「成行」にしましょう。

 保有株に緊急事態(とんでもない悪材料)が起こった時は、少しでも早く保有を無くすことを最優先すべきです。

 東京証券取引所のルールにより、この日の最大値幅は300円です。つまり、J社は前日終値が1312円でしたから、300円安の1012円までしか下がりません。

 そこまで株価が下がって買い注文が無くなると「ストップ安」「売り気配」となり、その後は取引が成立しなくなります。

 わずかなリバウンドに期待して指値売りを出している間に「ストップ安・売り気配」となって売買ができなくなると、悔やんでも悔やみきれません。次の日また売り気配で始まり、さらに大幅安となることもあるからです。

(本稿は、『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』から抜粋・編集したものです。)