「グローバル投資家のレーダーに映る」ことがまずは大切
海外企業が統合・合併により時価総額や事業規模が大きくなるなか、日本では上場社数が減らず、東証プライム市場に上場している企業の平均時価総額も4000億円程度と、欧米投資家の目線では「小型株」に分類される規模にすぎません。
日本経済の相対的地位が低下しています。さらに、金利上昇や景気後退懸念のなか、グローバルな競争力のある企業を見極める投資家の目線は厳しくなっています。
こうした環境下、日本企業が世界中の投資家から投資先として選んでもらうことは容易なことではありません。東証プライム上場企業の半数程度が解散価値割れを意味するPBR1倍割れの株価しか付いていない理由のひとつは、日本株の多くがグローバル投資家の注目を惹いておらず、十分な企業価値分析もされないまま安値に放置されていることにあると、私は考えています。
グローバル投資家からすれば、もっと時価総額が大きく、成長ストーリーが明確で、ビジネスライン(事業)の数がシンプルな欧米や中国あるいはアジアの企業の方が投資対象として考えやすいのです。
こうした環境下、日本企業は、それぞれが自社の特徴を精一杯アピールして、「グローバル投資家のレーダーに映る」ことがまずは大切です。その観点から、CFOが自ら海外IRに出向き、プレゼンスを示すことが極めて重要です。
実際、日本企業としてはかなり早期に再開した2022年の一連の海外IRでも、海外投資家は、時価総額やR&D(研究開発)費などの絶対額で欧米だけでなくアジアの同業と比べても見劣りする日本企業が、グローバル競争に勝ち残れるのか、冷徹に見極めようとしていると感じました。
IRで投資家と面談する日本企業の経営者は、呼称がCFOであろうと経理・財務担当役員であろうと、自社に関する質問について、「それはちょっとわからない」とか「自分の管轄外」と思っても、そう発言することは許されません。
社内の位置付けや対外呼称が文鎮型組織の経理・財務担当役員にすぎないとしても、投資家と面談する際には、「自分はCFOである」「Cスイートの一員、CEOと並ぶ共同経営者である」という役割を演じ、CFOの「ふり」をして、堂々と自信を持って回答することが求められます。
そして、社内では、「自分は経理・財務担当役員にすぎないけれども、経営戦略や人的資本経営やサステナビリティ・気候変動などについて、対外的に語る義務と責任がある」と主張し、投資家から得た反論や意見を社内にフィードバックするなど、それらの議論に積極的に加わり、知見を身につける必要があります。
社内と社外の結節点に立って、双方に刺激を与えることで企業価値向上に貢献するんだ、という熱量がCFOには必要です。