全国的に梅雨が始まり、雨の多い日が続いている。昼夜の気温差で体調を崩しがちな人も多いのではないだろうか。新年度が始まりようやく慣れてきたところで、どっと疲れが出やすい時期でもある。「疲れた心に寄り添ってくれる本」として人気の『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』(クルベウ著 藤田麗子訳)は、ついがんばりすぎてしまう人におすすめの1冊だ。著者のクルベウ氏は事業に失敗し、自分を励ますためにSNSに投稿していた癒しの言葉が多くの共感を集め、2015年に作家デビュー。本作はクルベウ氏の日本語初翻訳作品だ。読者からは「1ページ目から涙が出た」「すべての文章が刺さった」「大切な人にプレゼントしたい」との感想が多数寄せられている。本書に感想を寄せてくれた30代会社員のKazuさんも、転職先でがんばりすぎて体調を崩してしまった経験があり、「環境が変わって苦労されている方や忙しくて気が張っている方には、ぜひこの本を読んで、自分をケアしてほしい」と語る。今回は、Kazuさんに「疲弊しすぎないためにできること」について話を聞いた。
「結果を出さないといけない」プレッシャー
──Kazuさんは必要以上にがんばりすぎてしまったことはありますか?
20代後半で転職1年目のときです。自分にとってはステップアップの転職でしたが、転職先には業界で名の知れた人たちが多くいて、その中で「結果を出さないといけない」という思いが強くありました。
転職してすぐに、なんとなく体力が落ちたな、おかしいな、という体の異変は感じていたのですが、転職したばかりでがんばらなければ、という思いが先行していたため、自分の体調やメンタルについては見て見ぬふりをしていた気がします。
今思えば、大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしていたんだなと。
「つらくても弱みを見せたくない」
──ふだんから我慢しやすかったりするのでしょうか。
自分は「がんばっているところを見せたくない」タイプで、影で必死に仕事をしていました。つらくても弱みを見せることはあまりしたくない、動物で言うと猫のような感じだったかもしれません。
その点で、あまり人に頼らず、一人で抱えてがんばるタイプだったと思います。
──周りの人に頼れないのはしんどいですよね……。心身にも影響はあったのでしょうか。
結果的に、あるタイミングでパタンと倒れてしまいました。
そこからは、「また倒れるんじゃないか?」という不安から、会社に行くのが怖い、電車に乗るのが怖い、という時期が続きました。
いわゆる「不安障害」のような症状だったと思います。
勇気を持って上司に相談
──それは大変でしたね。つらい時期をどう乗り越えたのでしょうか。
当時の上司に相談しながら、仕事のペースを落としました。
自分の性格的には勇気のいることでしたが、そのときの上司は状況を理解してくれ、親身にサポートしてくれました。本当に感謝しています。
そこからは徐々に、1~2年をかけてふだんの生活に戻ることができました。
「周りの都合」よりも「自分のペース」を大切に
──振り返ってみて、限界を迎える前にできることはありましたか?
今思えば、もう少し自分の心の声に耳を傾けるべきだったと思います。
体や心が発していたシグナルを無視して、周りの都合にあわせてがんばってしまっていました。
もっと自分の心地よいペースで働くことが大切だったのではないかと感じています。
──限界を超えないよう、今気をつけていることはありますか?
断るときは断る、自分のタイミングを主張する。自分のペースで進められるよう気をつけています。
昔に比べると、かなり自己中心的に動いているんじゃないかなと。
でも、そのほうが悩みも少なく、仕事もプライベートもうまくいくようになったと感じています。
がんばりすぎていた頃は、転職したてだったこともあり、周りのペースに過度にあわせすぎていたのかもしれません。
「うまくいかない時期」とどう向き合うか
──最後に大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをしてしまっている読者の方にメッセージをお願いします!
『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』の本の中にある、「もし、すごく大変なことに直面したらなるべく力を抜いて、自分にできる最低限の働きだけをすればいい」という文章が好きです。
なんだか調子が悪い、気が乗らない、ということって人生ではよくあると思うんです。
そんなときは、完全に立ち止まるのではく、自分のキャパシティの範囲内で小さく動き続ける。
そうすれば、エネルギーが溜まって、再び大きく動き出せる気がしています。
常に「最大限」で動き続けた結果、私のように体を壊したら、元も子もないですよね。
環境が変わって苦労されている方や、忙しくて気が張っている方には、ぜひこの本を読んで、自分をケアしていただけるとうれしいなと思います。