空間コンピューティングが日本企業に与える影響
6月6日、アップルはロサンゼルスに拠点を置くAR関連スタートアップ企業、Mira Labs(ミラ社)を買収したと報じられた。世界的なスマホ需要の減少に対応するために、アップルは、空間コンピューティング事業分野への取り組みを強化するだろう。今後の注目点の一つは、新しいAIなどが、空間コンピューティングと、どう結合するかだ。
例えば、電話の留守番メッセージに取引先からの質問メッセージが残されたケースを想像してみよう。多くのケースで、わたしたちは、スマホ(電話機)でメッセージを確認する。次に、パソコンでネットにアクセスし、検索を行い、情報を収集し、資料を作成し、メールで送付する。少なくとも二つのデバイスが必要だ。
それが一つのデバイスで完結すれば、業務の効率性は高まる。だからアップルが、ヘッドセット型など新しいデバイスを開発し、それに新しいAIを実装する、といった展開が予想される。アップルは、生成AIなどと呼ばれる最新技術や、ウェブ3.0などのコンセプトを包摂したビジネスモデルの構築に取り組んでいるとも考えられる。
デバイスおよびチップの高性能化、小型化、消費電力性能の向上などのために、製造技術の向上は欠かせない。今のところ、日本企業は半導体部材や製造装置などの分野で競争力を発揮している。それは、TSMCの製造能力向上、アップルの設計、開発するチップの演算処理能力向上などを支える。
最近、日本企業の成長を期待する海外投資家も徐々に増えている。代表的な企業として、ソニーがある。ソニーは金融ビジネスの分社化を検討し、半導体やゲーム機などのハード、音楽や映画などソフトウエア両面で競争力を高めようとしているようだ。また、生成AIや量子コンピューターなどの開発に取り組む企業もある。
中期的に、世界経済のデジタル化は加速する。その恩恵をわが国企業が取り込むためには、空間コンピューティングなど、新しい収益分野の拡大が待ったなしである。
米欧における金融引き締め長期化への懸念など、世界経済の先行き不透明感は高まっている。そうした中、かつてソニーの「ウォークマン」がそうだったように、日本企業が世界を魅了するヒット商品をどれだけ生み出せるか、正念場を迎えている。