一方、自公連立の維持を主張する総裁候補が勝ったら、保守派もおとなしく、公明との協力にもっと尽力するか、それが嫌なら党外に出ればいいことだ。
確かな話は、総選挙で約束した政党間の協力は、個々の政治家の個人的信条とは関係なく、誠実に履行されるべきモノということだ。「俺は公明党が嫌いだから選挙協力しない」と言うなら自民党を出て行くべきだ。
そもそも、自民党と公明党の間の協力がもう一つうまくいかないのは、公明党による自民党への協力に比べて、自民党から公明党への協力が不十分だからだ。
なぜかといえば、公明党は支持者に対し、公明党以外の協力している党や政治家に投票してくれと頼むことができる。また、どの程度、票を回すかもある程度コントロールできる。
一方、自民党はそれができないからである(公明党・創価学会の力の源泉については、『日本の政治「解体新書」: 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』で詳細に分析している)。
自民党内には「小党である公明党に政策で譲りすぎだ」という不満がある。だが、その原因は、公明への選挙協力が不十分だからに他ならない。自民党が選挙でもっと公明党に貢献したら、政策での交渉力は強くなるはずだ。
もう一つ付け加えると、安倍元首相がいたときは、たとえリベラル寄りの政策をとっても保守派を抑えられた。だが、安倍元首相がいなくなったいま、それが誰もできず、それがLGBT法案を巡って、稲田朋美、古屋圭司、新藤義孝、さらには萩生田光一、高市早苗までもが「裏切り者だ」と、保守は内部で攻撃の対象になり、誰も事態をコントロールできていない。
そうなると、むしろ、自民党より右寄りの党があって過激な保守派の受け入れ口になったほうが、自民党主流派にとっても過激な保守派にとっても居心地がいいのかもしれない。
(徳島文理大学教授、評論家 八幡和郎)