「ホワイト企業=ゆるいブラック企業」の
陥穽

 先の識学の調査でも、働き方や上司の接し方で「してほしいこと・してもいいこと」を尋ねると、「やりたい仕事であれば、休日出勤などしてもよい」が20.7%でトップになるなど、まさに高橋さんが情報通信会社で望んでいたような、成長につながる答えが顔を連ねている(図2参照)。

 極端に過重な仕事を押し付けたり、理不尽な叱責を行ったりするのは論外だが、「ブラック企業」「パワハラ」などと評されるのを恐れて、若手社員への仕事の割り振りや指導を必要以上にためらうケースが少なくない。

 一見してホワイト企業のように思えるのだが、識学の安藤社長は「働きたい若者から成長する機会を奪う、『ゆるいブラック企業』に陥っているのです」と指摘する。

 前出のサービス会社の坂上さんの会社では、入社2年目以降の社員に「申告制度」を設けている。希望する仕事と違う場合は、上司を飛び越えて人事部に直接申告ができる。人事部は本人の過去の成果や勤務態度などを細かくチェックした上で、希望をかなえることがあるそうだ。若手社員に成長の機会を与える施策の一つといえるだろう。

 本来、成長意欲の高い若手社員は会社にとって貴重な財産であるはず。ホワイト企業であることで彼らを大切にしているつもりが、実は彼らから成長する機会を奪い、不満を募らせる結果につながっているのだとしたら、まさに“悲劇”としか言いようがない。

 採用や研修コスト、そして1年目の給与・福利厚生を考えただけでも、1人当たり何百万円というお金がかかっている。若手社員にとっても、過ぎた時間を取り戻せないのだから――。

※この記事は、ダイヤモンド・オンラインとYahoo!ニュースによる共同連携企画です