つまり、「儀式」の行われた6月16日を除けば、9日間で決められてしまったということである(しかも、諮問会議の開催は、内閣府のサイトで確認した限り、開催後まで告知されていなかった)。

 なんと拙速かつ乱暴なことか。むろん、この間、霞が関では骨太の方針の各省協議が行われ、内容が固められていったわけであるが、今後の経済財政政策を縛りうる文書であり、事務方中心で決めていいシロモノではないはずだ(加えて、「短冊」と呼ばれる関係する部分のみを抜き取った案により協議が行われ、全体像を把握していたのはごく一部の事務方のみであったようだ)。

政務調査会の全体会議は
単なる「ガス抜き」の場

 岸田政権としての重要文書であるのだから、少なくとも与党議員による徹底した議論は必要不可欠のはずであり、自民党の政務調査会では議論が行われたのであるが、これがまた丁寧さを欠く、ずさんなものであったようだ。

 自民党の政務調査会の全体会議で最初に骨太の方針原案についての議論が行われたのは、経済財政諮問会議で原案が示された翌日の6月8日。この時、責任ある積極財政を推進する議員連盟(以下、「積極財政推進議連」という)の会員議員を中心に、原案のさまざまな問題点が指摘され、修正を求める声が多く上がったようである。

 ところが、13日に開催された第2回の全体会議で提示された案は、原案とほとんど同じ内容で、議員たちからの意見を全くと言っていいほど反映していないものであった。

 これに対して、積極財政推進議連の会員議員らを中心に改めて問題点の指摘や修正意見が出されたが、それを踏まえた第3回全体会議は開催されず、多くの議員たちがその開催を知らされないまま、16日の持ち回り閣議における閣議決定となった。

 骨太の方針案に対して物申した議員たちからすれば、これではまるでだまし討ちであるが、要するに、官邸、そして骨太の方針の取りまとめ役の内閣府(といっても実質は財務省)は、自民党政務調査会の全体会議を単なるガス抜きの場として使い、議員たちの真摯(しんし)な意見を無視したということである(故安倍元首相と麻生副総裁による「頂上折衝」を含め、徹底した議論と修正が行われた昨年の骨太の方針を巡る状況とはまるで別世界である)。

 このように、議論をさせず、異論を排除して、極めて独善的に決められた骨太の方針2023であるが、どのような問題があるのだろうか。その核心部分を解説していこう。