今回のような骨太の方針では
日本経済は縮小・衰退していく

 しかし残念ながら、骨太の方針2023においては2025年度のPB黒字化目標が堅持されているのみならず、例えば、「経済あっての財政であり、現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢が歪められてはならない」と記載しているにもかかわらず、「財政健全化の『旗』を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組む」とその前に記載するなど、財政再建と称する緊縮財政の推進、経済の再生や経済成長は、政府がお金を出さず増やさず、民間任せで、その結果経済が成長すれば税収が増えて財政再建ができるはずだ、という机上の空論、誤った妄想で貫かれている。

 先にも解説したとおり、国債とは国による通貨発行であり、その残高は増えて当然である。したがって、税収を前提として国は財政支出を行っているわけではなく、税収とは無関係に財政支出をしているというのが実態である。

 税収が増えて財政再建という考え方は、国債ではなく税によって財政支出を賄おうという発想であるとともに、国債発行額を少なくするのみならず、その残高を減らしていこうというものである。

 聡明な読者であれば、その考え方が間違いであり、国債の発行残高を減らしていくということは発行した通貨を消していくことであり、経済の規模が小さくなることになるのではないかとお考えのことと思うが、まさにそのとおりである(一方、税には、増えすぎた通貨を吸収する役割や、特定の行為等を抑制する役割、法定通貨を強制的に通用させる役割といったものがあり、税は不要であるというわけではない。ただ、税と、財政支出=国債発行は無関係であり、役割が異なるということである)。

 このような骨太の方針では、適正な経済財政運営は困難であるし、目指す経済成長や経済再生など望むべくもない。それどころか、我が国経済は縮小・衰退していくだけである。

 既に閣議決定をしてしまい、政府の正式な文書として来年度予算編成の根拠ともなってしまう。だが、これだけ問題があり、その決定手続きも、国の予算は国会が決めるという財政民主主義を無視したに等しい。したがって、予算編成過程においては、その問題点を改めて検討し、国会議員、少なくとも与党議員は、積極的かつ機動的な財政の実現に向けて動くべきではないだろうか。