商工中金の中小企業設備投資動向調査を見ると、設備投資の目的として「維持・補修」や「設備の代替」と答えた企業の割合が低下する一方、「合理化・省力化」や「増産・販売力増強」と答えた企業の割合が上昇している。さらに、設備投資を形態別に見ると、工場などの構築物や生産機械への投資に比べ、ソフトウエア投資の増加が顕著であり、中小企業もITの活用を積極化している。

 大企業に比べて、中小企業はかねて生産性の低さや、IT投資の遅れを指摘されており、足元の動きは、日本経済の成長力の強化につながる前向きな動きといえる。

 もっとも、資源高を受けたコスト増や人手不足に伴う人件費の増加など、中小企業を取り巻く収益環境は厳しく、投資の持続性には疑問が残る。設備投資の原資となるキャッシュフローの増加は、設備投資の伸びに追い付いておらず、コロナ禍からの経済活動の回復が一巡すれば、中小企業の設備投資が再び減少に転じる可能性も否定できない。

 日本経済が長期にわたる低成長から脱却するには、中小企業の持続的な投資が不可欠である。政府も、ポストコロナを見据え投資を積極化する中小企業をサポートしていく必要がある。

(日本総合研究所調査部 副主任研究員 村瀬拓人)