「吐く息」に意識を向ける
──そうなんですね。もし、「呼吸が苦しい、発作が起きそうだ!」というとき、どんなことをしたらいいでしょうか?
川野:「吐く息に意識を向けたほうがいい」とお声がけをしています。ゆっくり吐きましょうと。
──ゆっくり吐く。
川野:パニック症状で呼吸が苦しく感じられると、どうしても一生懸命に息を吸おうとし過ぎて「過換気症候群」に陥ってしまうことが少なくありません。
これはいわゆる「過呼吸」という現象です。
過換気で問題になるのは、息を吸い過ぎることではなくて、吐き過ぎることです。
息をたくさん吐くことによって、呼気中の二酸化炭素がどんどん体から失われていきますから、次第に体内がアルカリ性に偏ってしまい、体に力が入らなくなったりしびれたり、場合によっては失神したりしてしまうわけです。
ポイントは「吐き過ぎないようにする」こと。
そこでできるだけゆっくり吐くように意識していただくと、ラクになることが多いのです。
吸えないと感じたときはゆっくり吐きましょう。
深呼吸で息を吐くときのように、フーーーっとゆっくり吐くのが大切です。
日頃から取り入れたい「数息観」
──それで体の感覚を取り戻すんですね。
川野:はい。次第に息がラクになっていくと、体の感覚も整ってきます。
坐禅で言うところの「数息観(すうそくかん)」ですね。
心の中で「ひとーつ」と言いながら吐いて、また吸って「ふたーつ」と言いながらまた吐く。
こうした坐禅の呼吸法は、日頃から習慣にしておくといざというときに呼吸が乱れにくくなり、パニック発作などの不安症状をお持ちの方にもおすすめしています。
私の担当させていただいている患者さんの中にも、この呼吸法を日頃から鍛錬することで、苦手だった地下鉄にも心の中で「ひとーつ」、「ふたーつ」と唱えて平穏な状態を保ちながら乗車できるようになって方がおられます。
ただ、こうした呼吸法はとっさのときだけ使うことはおすすめできません。
いざ発作が出て呼吸苦しくなってからやろうとしても、かえってうまく呼吸ができない感じが強調されてしまうこともあるからです。
大切なのはパニック発作が起きたときだけではなく、起きる前、日頃から習慣的に実践するということなんです。