新型コロナウイルスが5類感染症に移行して1ヵ月。以前より混雑している電車や人混みで息苦しさを感じるなど、気分が悪くなる人は多いのではないだろうか。身体疾患などの異常がないにもかかわらず、突然、動悸や強い息苦しさなどに襲われる“パニック障害”。その原因には「ストレス」が大きく関係していると言われている。自分の心に何が起きているのか。どう向き合えばいいのか。そういったことに興味がある人におすすめなのが、『こころの葛藤はすべて私の味方だ。』(チョン・ドオン著 藤田麗子訳)だ。著者の精神科医のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書は「心の勉強をしたい人が最初に読むべき本」「カウンセリングや癒しの効果がある」「ネガティブな自分まで受け入れられるようになる」などの感想が多数寄せられている。今回は精神科医で禅僧の川野泰周氏に本書の中でも取り上げられている「パニック障害」について聞いた。
「周囲に人がいる場所」で息苦しくなりやすい
──『こころの葛藤はすべて私の味方だ。』では「パニック障害」について取り上げています。パニック障害はどういうことがきっかけで起きる可能性があるのでしょうか?
川野泰周(以下、川野):パニック障害とは、身体的な要因がないにもかかわらず、突然心臓の鼓動がひどく高鳴るような感覚に襲われる動悸や、息ができないと感じるほどの息苦しさなどが出現し、「このままでは死んでしまうのではないか」という恐怖にかられるものです。
「パニック発作」は、時と場所を選ばずに出現する精神症状なのですが、とりわけ電車の中など、「周囲に人がいる場所」で起こりやすいです。
もし「周囲に人がいる場所」に限定されて、発作が起きる場合には「広場恐怖症」と診断される可能性があります。
──「広場恐怖症」ですか。
川野:はい。広場恐怖の「広場」というのは公園のような広場だけではなくて、「すぐひとりになれない場所」のことを言います。
──「すぐにひとりになれない」とは?
川野:すぐに自分の部屋に戻れない、休憩室やトイレの個室に入ることができない、など自分にとっての「安全地帯」に逃げることができないという状況です。
たとえば、電車やバスの車内、コンサートの会場、会議室など。狭い場所、広い場所に関係なくです
学生さんですと、入学式や卒業式に列席して立ってるときに、急に具合悪くなって倒れてしまうことがあります。
「貧血を起こした」あるいは「失神した」といった現象である場合も多いのですが、中には広場恐怖の症状としてパニック発作を起こしていたという場合もあります。