本気でなろうと思えば何にでもなれると信じることができた子ども時代と違い、年を重ねるごとに、なんとなく自分の未来が見えているように感じている人は少なくないだろう。違う未来を夢見たとしても、どうしたらいいかわからない……。そう諦めている人にオススメしたい本がある。クリエイティブディレクターでコピーライターの中川諒氏が書いた『発想の回路』だ。アイデアや企画を考える人のための本ではあるが、この本には人生を変えるヒントも書かれている。本記事では、本書をもとに中川氏が考える「想像していなかった未来」を手にする方法をご紹介する。(構成:神代裕子)

発想の回路Photo: Adobe Stock

「今」と地続きの未来を変える方法

 今、あなたは自分が想像していた、自分の望む未来を生きているだろうか?

「夢が叶った!」「願っていた通りの未来を生きているなぁ」と言い切れる人は、そんなに多くないのではないだろうか。

 また、5年後の未来を想像した時に、今の自分と劇的に違う人生が待っていると期待できる人もさほどいないだろう。

 なぜなら、何か大きな動きがない限り、人生は今と地続きだとなんとなく感じているからだ。

 もちろん、今に満足していて、その延長の未来を楽しみにしている人はそのままでいい。しかし、今と地続きの未来がくるのは気が重いという人は「小さな工夫」をしてみることをオススメしたい。

発想の回路の著者である中川諒氏が、「工夫には未来を変えるチカラがある」と語っているからだ。

 中川氏の語る「工夫」とは何か。その工夫により、人生はどう変わるというのだろうか。

大事なのは小さな「工夫」の積み重ね

 本書は、さまざまなアイデアを出し、効果的な企画を考え出すためのノウハウや仕組みを教えてくれる本だ。

 その中で、中川氏は「アイデアをつくるために『工夫』が必要である」と説明している。そして、この「工夫」こそが人生を変える力を持つと主張する。

うまくいっていない現状は、工夫によって想像もできない未来に変えることができます。工夫があなたのキャリアをつくるのです。工夫はあなたの人生に、分岐点をつくります。その時点で分岐した角度は小さかったとしても、時間が経つにつれてその分かれ道は大きく離れていくものです。(P.219)

 工夫するかしないかで、未来の到達点が変わるというのだ。

 実際、中川氏はいくつかの小さな工夫で人生に変化が起きたと語る。

 電通に入社した中川氏は、希望するクリエイティブ職に就くことができず、営業の部署に配属になる。やりたかった企画の仕事から遠ざかっていくのを、環境や他人のせいだと感じ、腐ってしまっていた時期があったのだそうだ。

 そんな中、いくつかの「工夫」をすることにより、中川氏の人生は変化を起こしていく。

 例えば、バイクの免許を取ったこと。バイクのクライアントを担当していたが、当時中川氏はバイクに触ったこともなかった。しかし、免許をとって、フルカスタムのバイクを手に入れたことで、数年後にバイクに乗っている動画がSNSでバズり、インスタグラムのフォロワーが3万人を超える日が来る。

 他にも、営業部にいながら企画の仕事をするために、自分で企画をはじめたことも、中川氏の人生を変えた。紹介された米農家さんの悩みを解消するための仕組みを考え、商品を開発。その商品がグッドデザイン賞などを受賞し、クリエイティブ局に異動することができたのだ。

これらの変化が起こったのは、わたしに才能があったからや、能力が高かったからではありません。どれもその場で行った小さな小さな工夫の積み重ねが、少しずつ大きなうねりとなって未来を変えていたのです。(P.218)

「努力」は限界があるが、「工夫」は無限

 こういった話を聞くと「中川さんが努力したからだろう」「私には努力が足りなかったから」と、努力が人生を左右していると思ってしまいがちだ。

 しかし、中川氏は「実は足りなかったのは努力ではなく、工夫の場合が多い」と指摘する。

なぜかと言うと、努力には誰しも限界があるからです。限界のある努力に自分のすべてを任せるのは、やや無鉄砲ともいえます。一方で、工夫は無限にできます。何かを途中で諦めてしまったときは、自分の努力する力に頼り切ってしまったことが敗因です。(P.222)

 ここで言う「努力」とは、山登りで例えるとまっすぐな矢印だ。一つのルートを決めて、目の前に大きな障害があろうと、その障害を押しながら進み続けるようなものだと、中川氏は語る。

 一方で、工夫というは「一度選んだ道が進めそうになければ、別のルートを探して進み続けるイメージ」だという。

たまには下りるように見える道を選んでもいいのです。障害が目の前に現れたとしても、改善、解決、解消、回避と4つの工夫を繰り返しながら、自分の進みやすいルートを選んでいくことができます。(P.224)

 たしかに、決めたルートをまっすぐ登らなくても、頂上に辿り着けば結果は同じだ。時間がかかるかもしれないが、つらくない道のりもあるし、ショートカットできる道もあるかもしれない。

 本書は、がむしゃらに努力することが正解ではないと教えてくれている。

自分だけの「工夫」が新たな未来をつくる

 もうひとつ、努力を指針にすることの弊害があるという。それは、「努力は他人と矢印が同じ方向を向いているため、比較が行われやすい」という特徴があるからだ。

 同じ方向を向いて努力をしていたら、より強く太い矢印を持った人が抜きん出ていく。そうなると「あの人には敵わない」と自分を推し進める力を弱めてしまうのだ、と中川氏は説明する。

 この経験をしたことがある人は多いのではないだろうか。

 筆者は、この話を読んで、ある美容師のことを思い浮かべた。

 彼は、美容師になった頃、技術でナンバー1になることを目指していたが、早々に諦めたと教えてくれたのだ。なぜなら、「上には上がいるからだ」と彼は語った。

 そして彼は、「技術でナンバー1になるのではなく、他の人が真似できないオンリー1を目指そう」と思い直し、自分の強みを活かしたオリジナルの肩書きを考えた。そして、その強みに特化した美容師として活動を始めたのだ。

 その結果、彼は現在、本を何冊も出し、メディアに出演するほどの売れっ子美容師となっている。

 これこそ、中川氏のいう「工夫」のチカラなのだろう。

人生の問題も「4つの工夫」でアプローチ

 何か自分の人生において変化が欲しいときや、自分の望む将来に向かうには何か問題があるときは、ぜひ中川氏の言うように「改善、解決、解消、回避」でできることはないかを考えてみるといい。

 これらは、「それぞれ次の質問からはじめると考えやすい」と中川氏は教えてくれる。

①改善:「これってもっと」からはじめみよう
②解決:「どうやったら」からはじめてみよう
③解消:「そもそも」からはじめみよう
④回避:「いっそのこと」からはじめてみよう(P.67)

 今抱えている困りごとに対して、この4つの質問を投げかけ、何か方法がないかを考えてみるのだ。

 何もしないまま、ずっとその状態を続けるよりも、きっと何か変化が起こるに違いない。そして、うまくいかなければ、また違う方法を試せばいいのだ。

 そうして起こる変化によって、「地続きの未来」よりも少しでも「理想の未来」に近づくのであれば、やってみて損はないのではないだろうか。

 だって、「工夫は無限」なのだから。