ホンダと中国勢がライバル

――東南アジアの中で、一番はじめに進出しようと考えている地域はどこでじょうか。
 はじめはベトナムを中心にやっていこうと考えています。市場調査の結果や各国の法規制などの要因もありますが、最も重視しているのは、現地の顧客にどこまで受け入れられるかです。
ベトナムでは若い女性も含めてみんなスクーターに乗っています。インドネシアやタイでは、利用者の男女比が7:3で男性のほうが多いですが、ベトナムでは半々。スクーターが生活に密着しており、日本でスマートフォンの新型が発売されたら大きなニュースになるように、ベトナムではスクーターの話題が大きなニュースになります。

 ベトナムの若い女性を20人ほど集め、スクーターについて意見を求めたら、次々に意見が出てきたうえ、私も知らないような小さな会社が販売している製品の名前も数多く上がりました。日本ではありえない話で、非常に可能性を感じました。

――競合相手はどのようなところになるのでしょうか。
 競合相手は大きく2つあり、一つは大手のホンダです。ただ、彼らはもともとエンジンメーカーのため、電動バイクへの大幅な参入はジレンマがあります。今まで行ったガソリンエンジンへの投資の大部分が使えなくなるということがあり、参入するには相当思い切った転換が必要でしょう。なかなかやりにくいのではないですか。

 もう一つは中国勢。中国国内での成功もあり、会社の数も200社から300社と非常に多いため、一番の課題です。

 でも、僕の中では何とかなるのではないかと思っています。というのも、中国勢は2005年に一度ベトナムに参入したことがあり、当初は1年間で13万台もの販売台数を記録しましたが、安さを追求する代わりにアフターケアを行わず、格好が悪い、スピードが遅くて壊れやすいと、非常に品質が悪かった。

 その結果、2年ほどで市場から完全に消えてしまい、今は悪いイメージだけが残ってしまっています。中国は使い捨ての文化で、顧客のほうも、半年や1年で壊れてしまっても新しいのを買えばいいと思っています。しかし、東南アジアでは一つのものを長く使うという文化があり、それにうまく対応できていない部分がある。この点は、品質を重視する日本の企業のほうが向いています。