これに対して、体で覚える手続き記憶は、海馬よりも奥にあり、人間の運動に必要な筋肉の動きをコントロールする「大脳基底核」と小脳の「ニューロンネットワーク」で処理されるため、定着しやすいのです。

 紙に手書きする行為は、頭で考えるだけでなく、手という体を使っています。つまり、頭だけで考えているときよりも、ペンを使って体で考えるほうが、脳の活用部分が多いため、記憶にも定着する効果が期待できるのです。ぜひ、手と思考の共同作業で思考を深めていくというイメージで取り組んでみてください。

細かくメモを取るよりも
大まかなメモのほうがいい

 メモを取るときに、スペースいっぱいにびっしりと文字を書き込むタイプの人と、適度に余白を持たせて書くタイプの人がいます。実は、後者のほうが仕事を速く進める才能の持ち主であるといえます。

 たしかに、小さい文字で何度も同じ文字を書くと、記憶しやすいという効果はあります。漢字の書き取りなどを思い浮かべるとわかると思いますが、びっしり書くと「頑張った」という充実感も得られます。実際に、そうしたびっしり書く方式の記憶法も提唱されているようです。

 しかし、メモをもとに思考やイメージをする場合には、この方法は適しているとはいえません。適度に余白をつくっておいたほうが、思考を促す効果があるのです。

 単純に、びっしり書き込んだメモと、適度に余白を持ったメモを比較すると、余白があるほうに読みやすさを感じるはずです。「読みやすい」ということは、脳が情報を理解しやすいという意味でもあります。

 余白があることで、読むときに、自分が書いた情報をしっかりと理解することができます。また、余白には間を生み出す効果があるので、情報を精査しながら思考を深められるような感覚も得られます。

 たとえば、チラシやカタログを見たときに、すんなり頭の中に入ってくるものと、何を伝えたいのかよくわからないものがあります。適度な情報量が整然とレイアウトされ、適度に余白があると、伝えたい意図が瞬時に理解できます。