情報格差を解消する「Winの4乗ループ」

 経済学の用語に「情報の非対称性」という言葉があります。売り手が商品やサービスに関する情報を独占的に保有し、一方の買い手には情報が十分に知らされておらず、双方の間に情報格差が生じている状態のことです。

 とりわけ不動産や中古車など一見しただけでは欠陥に気づきにくい商品や、医療サービスや法律相談などのように専門性の高い領域では、この情報の非対称性が生じやすくなります。

 こういったジャンルにおいては、消費者を恣意的に誘導しようとする誇大広告が出回りやすくなります。日本でも、アフィリエイト収入を目的とした「飲むだけで脂肪が燃える!」「巻くだけで腹筋がバキバキに!」などといった悪質な広告があとを絶たず、一部の事業者に消費者庁が措置命令を行うケースも見られます。

 この問題に対して、世界のテック企業が運営するプラットフォームでは、売り手と買い手が互いに協力する「共犯関係」によって情報格差を解消しようとする動きが見られます。

Winの4乗ループ(『GAFAも学ぶ!最先端のテック企業はいま何をしているのか: 世界を変える「とがった会社」の常識外れな成長戦略』P.61より転載)Winの4乗ループ(『GAFAも学ぶ!最先端のテック企業はいま何をしているのか: 世界を変える「とがった会社」の常識外れな成長戦略』P.61より転載) 拡大画像表示

 冒頭のようなインフルエンサーが活躍するライブコマースでも、ユーザー同士でコメントを出し合いながら疑問点をクリアにし、売り手の側もユーザーのリクエストに応じて情報を公開することで、ユーザー側が十分な情報を得ることができます。しかも、ライブ配信だからごまかしがきかず、情報の信頼度はさらに高まります。

 美容医療の分野においては、中国で最大の人気を誇る美容医療プラットフォーム「ソーヤング」が、インフルエンサーが自ら体験した施術の経過やレビューなどを画像・動画で公開することで、これ以上ない「ファクト」にもとづいた信頼度の高い情報を発信しています。

 そのインフルエンサーに対してもユーザーのフォローがつくとともに大きなキャッシュバックが得られるので、より正確でリアルな情報を提供しようとするインセンティブが働きます。

 このように、プラットフォーム、企業(売り手)、買い手、さらにインフルエンサーの4者が「Win」の4つのエンジンで好循環を回す「Winの4乗ループ」が、最先端のテック企業では非常にうまく構築されており、情報格差を解消しながらプラットフォームの価値を高めています。

 その具体的なケースとポイントを見ていきましょう。