1万件を超える「幼児から高校生までの保護者の悩み相談」を受け、4000人以上の小中高校生に勉強を教えてきた教育者・石田勝紀が、子どもを勉強嫌いにしないための『勉強しない子に勉強しなさいと言っても、ぜんぜん勉強しないんですけどの処方箋』を刊行。子どもに失敗してほしくない、教育熱心な人ほど苦悩を抱える大問題への意外な解決法を、子育てを「動物園型」「牧場型」「サバンナ型」にたとえて解説します。

子どもの成長を邪魔する高学歴親の勘違いとは?Photo: Adobe Stock

“放牧”すると、子どもの人生が幸福になる

 中学受験経験者で高学歴の親の子育て相談には、子どものためというより親の自己満足のために、子どもに過剰なプレッシャーを与えているケースが多く見られます。

 親自身に成功体験があると、「自分ができたんだから、子どもにもできるはず」と思ってしまうようです。

 また、世間で「勝ち組」と言われる親は、さまざまな努力をして競争社会で勝ち抜いてきた自信と自負があります。それ自体は素晴らしいことですが、「自分は間違っていない。自分がやれと言ったことをやれば子どもも成功できる」と信じて疑わないケースが多いのです。

 もちろん高学歴の親が学ぶことのおもしろさを伝え、仕事も人生も楽しんでいれば、子どもも「勉強すればいいことがありそうだ」と思うかもしれません。

子どもの成長を邪魔しないと決める

 しかし、しつこく言いますが、「親と子どもは性格も才能も違う」のです。

 弱肉強食のサバンナの世界で勝ち続けてきた親の成功体験を押しつけようにも、実際に立ち向かうのは、自分とは違う子どもです。

 親自身が、「勝ち組にさせるためには○○しなければならない」と決めつけ、強引に子どもを自分が望む方向へ誘導しないように気をつけましょう。

 もしも、親が自分の仕事に誇りを持っているのなら、その仕事がどんなに素晴らしく、どんなにやりがいがあるか、自分の考えを語って聞かせればいいのです。

 親の見栄や世間体ほど、子どもの成長を邪魔するものはありません。たとえ親の思い通りに育てても、「自分の人生はなんだったのか?」と子どもに思わせてしまったら後戻りはできません。

「子どもが望むことを実現するために適切な環境をつくる」と親が決意すれば、やがてお子さん自身が自らの進路を自立的に選択していくはずです。

*本記事は『勉強しない子に勉強しなさいと言っても、ぜんぜん勉強しないんですけどの処方箋』から、抜粋・構成したものです(次回へ続く)。