輸送量がコロナ前を上回った
千葉都市モノレール

 では輸送量の減少率が低かった路線の特徴はどうだろうか。2019年比80%以上の25路線の内訳は地下鉄が10路線、モノレール・新交通システムが5路線で、過半数が通勤利用の比率が高い都市高速鉄道だ。千葉都市モノレールは唯一、コロナ前を上回る104%を記録しており、三田線、南北線、副都心線は90%を超えている。

 3路線は東急線と相互直通運転を行っているが、前述のように東急線は減少率が大きい。渋谷、目黒を目的地とする(地下鉄に直通しない)利用者が減少した可能性もあるが、東京北部、埼玉方面からの利用者の減少が少ない影響と考えられる。

 というのも輸送量85%以上の郊外路線を見ると、武蔵野線、東武野田線(柏口)、流鉄流山線、つくばエクスプレスと、いずれも東京都心から北方の路線であり、首都圏の南北で通勤スタイルに大きな変化が生じている。

 気になるのは今後である。2023年度に入ってから各社が発表している月次営業状況を見ると、4月、5月の通勤定期輸送人員は2022年度同期より5%前後増加しており、社会経済活動の正常化により長らく停滞していた通勤利用が回復に転じているようだ。

 鉄道事業者は、定期利用はコロナ前まで戻らないとみて、減便などラッシュ輸送のスリム化を進めている。実際、100%元に戻ることはないだろうが、利用回復と減便のバランスをどう取るか、難しいかじ取りを迫られる。その意味でも2023年の混雑率調査が今後を占うことになるだろう。