絶賛派と酷評派に共通する感想
他のジブリ作品以上にタイトルが気になる?
本作品についての数々の評価を手動でスクリーニングして見比べたところ、絶賛派(高評価)と酷評派(低評価)、その両極においても共通している「作品への感想」がいくつかあった。以下である。
●「内容が難しい。あるいは理解不能」
絶賛派は「よくわからなかったけれど、なんかとにかくすごくよかった」との声(もちろん自分なりの解釈で理解して絶賛に至る人も多数いる)。酷評派は「物語として破綻している」という着眼点である。まれに「わかりやすかった」という人もいる。
なお、初号試写会(関係者向けの試写会)後に読み上げられた監督自身のコメントでは、冗談めかして「おそらく、訳が分からなかったことでしょう。私自身、訳がわからないところがありました」と語られている。(参照)
●「過去の宮﨑駿監督作品の要素をいくつも見つけた」
多くの人がこの最新作に、過去の宮﨑駿監督作品との類似、共通点、もっと積極的にはセルフオマージュを見いだしたようであった。
●「観客をだいぶ突き放して制作されている」
作品内にて説明が十分に行われないまま物語が進んでいく箇所がいくつかあり、絶賛派はそれを「監督が自身の芸術性を気が赴くままにいかんなく発揮している」と好意的に受け止めた。一方、酷評派にはそれが「自己満足」と映ったようである。
また、これは感想ではないが、「本作に託されたメッセージは何かと探求する姿勢」も絶賛派・酷評派に共通して見られる傾向であった。絶賛派は「これがメッセージなのでは」と手応えを感じていて、酷評派は「大上段に振りかぶっておきながらメッセージはない」と切り捨てている。
何しろタイトルが『君たちはどう生きるか』と、分厚いテーマを直球でぶつける問題提起である。公開前の事前情報がタイトルとポスタービジュアルくらいしかなかったから、従来の作品に比べて本作はタイトルに意味がより強く求められたであろうことは想像に難くない。
なお、『君たちはどう生きるか』は、宮﨑駿監督が子どもの頃に読んで感銘を受けたと語る吉野源三郎氏の同名小説から名前を拝借したもので、内容はまったくの別物である。