「もし時間を巻き戻すことができるのであれば、私はこれほど複雑な問題に関して別の言い方をしていただろう。私の発言に異議を唱えた人に対する反発は特に遺憾に思う」

 この騒動において、サマーズはすぐには謝罪せず、不本意ながら謝罪した形跡があるのだという。もちろん、早急に遺憾の意を表明していれば大炎上を避けられたかどうかは分からないが、06年6月末をもって辞任に至った。

17年にも報じられていた
会社の関与が疑われる不祥事

 ビッグモーターの話に戻すと、同社は救いようがないと思うのは、17年にも産経新聞(17年2月26日)で、以下のように会社が関与したとみられる不祥事を報じられていることだ。

「同社(ビッグモーター)では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた。産経新聞の取材に同社は昨年12月、『会社と関係なく店長間で慣習的に行われていた。一切強制していない』と説明した」

「しかし、昨年6月に全社員宛てに送られた兼重社長名での社内メールでは、『保険選手権大会に関して』とのタイトルで『罰金を払うということは、店長としての仕事をしてないということだ!』『罰金を払い続けて、店長として(中略)恥ずかしくないか!』などと記載されていた」

 また、19年には、就職活動をしている学生の「内定辞退率」予測データが本人の同意なく売買されていた、いわゆる「リクナビ問題」でサービス利用企業として名を連ねており、政府の第三者機関である個人情報保護委員会から個人データの取り扱いが不適切だとして、指導を受けている。

 過去にも社長を中心とした会社全体のモラルハザードが起きており、今回の報告書を待たずとも、ガバナンスの改善は行っていなければならなかったのである。

 新社長が涙を流そうとも、これだけのスキャンダルが積み重なった中古車販売会社に、車の売買や修理の依頼をしようと思う消費者が多いとは到底思えない。中古車販売や修理の会社などはほかにもたくさんある。

 いい謝罪、悪い謝罪は確かに存在していて、自身のスキャンダルをいい謝罪で乗り越えるケースもある。しかし、ビッグモーターについては、過去の経緯から考えて謝って済まされるものではない。そして、提供するサービスを代替する会社がいくらでも存在している以上、このまま奈落へと落ちていくのではないだろうか。

 ゴルフボールでの車体破壊について兼重氏は怒ってみせたが、本来は利用者が怒るべきものであり、これから本当の地獄がビッグモーターを待つのだろう。表情から察するに、辞任も不本意なのだろうが、全て兼重氏の責任であり、社長を退くのも当然のことだ。