新社長となった和泉氏は会見中、涙を流しながら「迷惑をおかけした保険会社、取引企業全てのステークホルダーに改革をやり抜くということを約束したい」と述べていたが、涙を流したいのは消費者、利用者の方だろう。
前社長の兼重氏も「報告書を見て、こんなことまでやるのかとがく然とした。車を傷付けるなどあり得ない。これは一線を越えている。ゴルフボールを靴下に入れて振り回して損傷範囲を広げて水増し請求する。本当に許せません。ゴルフボールで傷付ける、ゴルフを愛する人に対する冒とくですよ」と述べたが、これが利用者の感想であればうなずけるのだが、経営トップのする発言ではない。
報告書が出る以前にも、週刊誌「FRIDAY」(2023年5月5日号)、および、フライデーデジタル(23年4月29日)において、『追及スクープ!”中古車販売業界の雄”ビッグモーターが「客のタイヤ」に穴を空けていた「衝撃動画」』と題する記事などで、工場ぐるみの組織的な工賃水増しや保険金の過剰請求疑惑を詳細に報じている。
このときも、フライデーの質問状に無視を決め込んだのが兼重氏だった。報告書を見てがく然としたのであれば、4月段階の報道ではどんな思いを持っていたのだろうか。
謝罪拒否が賢明な場合もあるが
自殺行為の場合もある
一般論としての「謝罪」には、いくつかのメリット、そしてデメリットがある。
たとえ意図せずに過ちを犯したケースであっても、私たちは謝罪を求められることがある。結果として傷付けてしまったことを認め、後悔の念を表明することはよくあることだ。「ごめんなさい」「申し訳ありませんでした」と言葉にして、賠償も含めて、状況を改善することになる。
しかし、謝罪は「被害者心理の引き立て」という負の効果をもたらすものである。「謝罪」が適切でない状況で行われると、それが被害者心理をエスカレートさせてしまい、問題の拡大をもたらすことがある。