Nさんが転職した後の
家計収支はどうなる?

 さて、ここからはNさんが転職した後の家計収支を見ていきます。転職後の収入は500万円と書かれていますが、こちらも額面金額の可能性があるので手取り額は420万円とします。

 年間支出額は従来の535万8000円から、息子さんの中学時代の塾代(年間34万9800円)をカットした500万8200円。切りが悪いので501万円とします。

 年間収入は420万円、年間支出は501万円ですから、年間収支は81万円の赤字となります。正直なところ、このペースで資産が減ってしまうのはかなり厳しいです。

 先述の通り、息子さんの教育費を支払い終えた後の金融資産額は1044万円です。そこから毎年81万円を取り崩すと、49歳で転職してから12.9年後(Nさんが61歳)の時点で金融資産は底を突いてしまいます。

 息子さんが大学卒業とともに独立すれば、生活費が抑えられるので年間支出は減るでしょう。ですが、それでも公的年金の受給が始まる65歳まで金融資産が持つ可能性はほとんどないといわざるを得ません。Nさんは転職に際して、早急に家計収支も見直すべきだと言えます。

 まずは何と言っても、家計支出を収入よりも低く抑えなければなりません。転職後のNさんの手取り収入は420万円ですから、金融資産の取り崩しを防ぐには、支出額をそれ未満にする必要があります。

 支出の内訳が書かれていないため詳細は分かりませんが、外食を減らす、携帯電話の料金プランを見直す、不要なサブスクリプションサービスを解約するなど、できるところから始めてみてください。そうした工夫によって支出を減らし、一般的に老後資金の目安とされる2000万円程度まで資産を増やしておくと安心でしょう。

 この点について、Nさんの転職後の資産は1044万円なので、2000万円を準備するにはあと956万円必要です。Nさんが転職する49歳から、公的年金の受給が始まる65歳までは16年間ありますが、16年間で956万円をためるには「1年間に約60万円」のペースが求められます。

※今回の試算では、試算対象の年齢になった誕生日から、次の誕生日までの期間を「1年」として計算しています。

 転職後のNさんの手取り収入が420万円であることを考慮すると、このペースで貯金するためには年間支出額を360万円(従来の501万円から約28%減)に抑える必要があります。

 ただし、筆者がFPとして家計相談に乗ってきた経験上、このレベルの支出カットを長続きさせるのはかなり難しいと言わざるを得ません。