33時間残業したはずなのに、
22時間しか残業手当が付いていない
・1日の勤務時間:午前9時から午後6時まで(休憩時間1時間)、所定労働時間8時間
・年間所定労働日数:240日
・給与(月給制):基本給30万円、通勤手当2万円
・月末締め翌月25日払い
・Aの1カ月当たりの平均所定労働時間:160時間(240日×8時間÷12カ月)
・Aの時給:1875円(30万円÷160時間)
・Aの1時間当たりの時間外手当:2343.75円(1875円×1.25)→2344円とする
(円未満・50銭以上1円未満切り上げとして計算)
自席に戻ったAは、パソコンで6月の出退勤記録の残業時間を確認すると「間違いない」とつぶやき、B課長に給与明細書を見せて尋ねた。
「課長、出退勤記録によると6月は22日出勤で、1日当たり1時間30分の残業をしているので残業時間の合計は33時間。しかし残業代は22時間分しか付いていません。残りの11時間分はどうなっていますか?」
B課長は涼しい顔で答えた。
「ああ、それね。ウチの会社の残業代は1日当たり残業時間を1時間単位で計算し、1時間未満は切り捨てることになってるんだよ」
「じゃあ私の場合、毎日1時間半残業しても30分は切り捨てで、1時間分の残業しか付かないってことですか?」
「そうだよ」
「1日30分もタダ働きだなんておかしくないですか?自分が以前勤めていた会社では、残業時間1分ごとに残業代が付いてましたけど」
「社長がそう決めたんだから仕方ないだろう? 他の社員も皆同じように計算しているけど、今まで文句を言われたことはないよ」
納得できなかったAは、C社長のところへ駆け込んだ。Aの話を聞いたC社長は、残業代の計算方法はB課長の話通りだと認め、「ちゃんと就業規則にも書いてあるでしょ?」と付け加えた。Aは食い下がった。
「自分は、仕事が終わらないから残業してるんです。真面目に働いているのに残業代を切り捨てるなんて、おかしいですよ」
しかしC社長は、「就業規則で決まっているから」の一点張り。挙げ句の果てに
「これからD社労士が訪ねてくるから、君はもう席に戻りなさい」
と邪険にされた。C社長の態度に強い怒りを覚えたAは、早くも会社を辞めたくなった。