そんなときに医者に難解な専門用語で説明されたならば、『わかったような、わからないような』で病院を後にすることもあるのではないでしょうか。これでは、良い治療とは言えません。患者さんご自身が、ご自分の病状を正しく把握し、その対処法まで理解して、初めて治療がスムーズに回り始めます。診察室での説明も治療のうち。患者さんの理解度に応じて、平易に説明してくれる医者を選んだほうが、ストレスも減って、病と戦うエネルギーが湧いてきますよ」

(5) アナログとデジタル、
両方を重んじているか

「患者さんの医者に対する不満のひとつに『患者を見ずに、パソコン画面ばかり見ている』というのがあります。確かに、様々な医療機器で検査するほうが早いし、正確な情報がパッと掴めます。正しく画像が読めたり、採血の分析がきちんとできることは、医者としての必須のスキルです。しかし、『医は仁術』。人を治すには、手のぬくもりも必要です。

 聴診器や触診で得られる情報と各種検査で得られる情報、そのどちらにも重んじるべき価値があります。アナログとデジタルは、それぞれ欠かすことのできない医療の両輪。どちらも大切にしている医者かどうかを観察してみてくださいね」

(6) 病院スタッフの感じが良いか

「病は気の持ちようで、よくも悪くもなるものです。そのためには、患者さんを最優先に考えてくれるクリニックを選ぶことが重要です。見極めるひとつのポイントとして、僕は『受付スタッフの印象』を挙げたいと思います。何故ならば『患者さんファースト』の気概と覚悟のあるクリニックは、受付スタッフの対応も含めて、院長がすべてに目を光らせているものです。スタッフの対応を見れば、クリニックに流れている空気がわかります。

「病は気から」
この医師で頑張ろうと思えるか

 受付に立った瞬間、『なんか嫌だな……』となったならば、治療の意欲も削がれます。万が一『病院になど、二度と行くものか!』になったとしたら、悔やんでも悔やみきれない結果を生み出すかもしれません。積極的に病院に行きたい人なんていません。だからこそ、少しでも気分が満たされるクリニックを選ぶことが大事です。その満足感が巡り巡って患者さんの『頑張って治そう!』という奮起を促し、快復へとつながっていくでしょう」

 実際、腕のいいドクターや信頼できるドクターを見分けるのは相性もあるので難しい。本当の意味で、いいドクターというのは、自分で探さなければならない。しかし、患者からすれば、医者は大切な我が身を預ける存在。「病は気から」という言葉のとおり、「よし!この先生のもとで頑張ろう!」と思えるかが重要なのだろう。

 これまで述べたことが「自分にとっての最高の名医」探しの参考になれば幸いだ。

(作家&教育・介護アドバイザー 鳥居りんこ)


【監修】石黒智也(いしぐろ・ともなり)

患者が真の“名医”を見極める6つのポイント

 日本内科学会認定内科医/同・総合内科専門医/日本消化器病学会専門医/日本消化器内視鏡学会専門医/H.pylori感染症認定医/日本がん治療認定医機構 がん治療認定医/日本消化管学会胃腸科専門医/緩和ケア研修 修了医。1979年、岐阜県生まれ。2005年、岐阜大学医学部卒業。総合病院での一般内科、消化器内科、救急医療の研修を経て、胃・大腸内視鏡検査及び治療件数で全国有数の昭和大学横浜市北部病院・消化器センターに入局。「痛くない、つらくない」内視鏡の挿入法などを徹底的に学ぶ。2016年、神奈川県茅ヶ崎市にて「湘南いしぐろクリニック」開設。現在、「新横浜国際クリニック」「湘南いしぐろクリニック 鎌倉院」と合わせて3施設の医院を運営する医療法人社団MBSの理事長を務め、早期がんの発見やお腹のトラブル撲滅のため、日々研鑽を積んでいる。趣味はプロ野球観戦、サーフィン、カラオケ。医大生時代は本気で芸人を志したこともあり、お笑い番組も大好き。